Web3界隈で非常に重要な概念の「DAO」。今後、既存の組織のカタチを大きく変える可能性を秘めています。
そこで、この記事ではWeb 3.0や仮想通貨の理解を深める上で重要な概念であるDAO(分散型自律組織)の意味や特徴、銘柄や事例についてわかりやすく解説します。
DAOはこれまでの企業をはじめとする組織の形態を大きく変える可能性を持っています。結論から言うとDAOとは、
- ブロックチェーン技術をもとに管理者が存在せずメンバーの共同管理を実現した組織
- ガバナンストークンなどによって民主的な運営を実現している
のことを指します。このことを念頭に置いて以下の文章を読み進めて頂ければと思います。
この記事は、経済オタクで仮想通貨にハマっている資本主義の奴隷編集部が執筆しています。
DAO(自律分散型組織)とは何か?
ここではDAOの定義と、既存の組織との違いについて解説していきます。
DAOとは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、和訳すると分散型自律組織になります。管理者が存在せず、メンバーが共同所有を行うような組織のことを指します。
既存の組織のようなトップダウンではなく、究極の民主主義をテクノロジーで実現した(ようとしている)組織の形です。
イーサリアムの公式HPでは以下のように定義されています。
・非中央集権型のメンバー所有のコミュニティ。
出典:イーサリアム公式HP
・インターネット上の見知らぬ人とコラボレーションする安全な方法。
・特定の目的に資金を安全に投入できる場所。
DAO | 従来の組織 |
---|---|
通常はフラットな組織で、 完全に民主化されています。 | 通常は階層的 |
変更を実行するには、 メンバーによる投票が必要です。 | 組織構造によっては、 単独の当事者から変更が要求されることがあり、 または投票が行われる場合があります。 |
投票は集計され、結果は信頼できる 仲介者なしに自動的に実行されます。 | 投票が可能な場合、 投票は内部で集計され、 投票結果はマニュアルで処理される必要があります。 |
提供されるサービスは、 自動的に分散化された方法で処理されます (例えば慈善資金の分配)。 | 人間による処理、 または集中管理された自動化を必要とし、 改ざんされるおそれがあります。 |
すべてのアクティビティは 透明で完全に公開されています。 | 通常、アクティビティは非公開で、 一般には公開されません。 |
なぜDAOが注目されているのか?
仮想通貨界隈では、現在DAO(分散型自律組織)が流行語となっています。なぜなのでしょうか?その理由にはNFTやDeFiなどの仮想通貨分野の盛り上がりがあります。
DAOは2021年以降のWeb3ブームの中からから生み出された組織形態です。
2017年の仮想通貨がブームになってから、DeFi(分散型金融)、NFT(非代替性トークン)が登場しました。これらは、全てバラバラで起こった出来事ではありません。
なぜなら、仮想通貨はお金、DeFiは金融機関、NFTはモノや土地のあり方を大きく変える技術であり、その延長で、DOA自体は組織を変える技術だからです。
仮想通貨らDAOに至るまでのテクノロジーは、既存の人間社会を支えていたインフラのあり方を大きく変えようしていることが注目の要因なのです。
新 | 旧 |
---|---|
仮想通貨 | お金 |
DeFi | 金融機関 |
NFT | 土地・モノ |
DAO | 組織 |
DAO(自律分散型組織)の特徴と性質
DAO(自律分散型組織)の性質として、主に以下の3つが挙げられます。
- 中央管理者がいない
- 透明性が高い
- 投票で全てが決まる
中央管理者がいない
DAOにおいて、特定の組織の運営者や所有者は存在しません。
中央管理者が存在しないため、コミュニティーに参加している人たちの投票によって意思決定がなされる点に特徴があります。
従来の組織は、中央に意思決定をする人がいて、その意思決定をもとに下の人々が行動をするというトップダウン形式が主流でした。
株式会社は、その最たる例で、経営者が経営計画を策定して、それをもとに労働者が動くトップダウン形式になっています。
DAOは、そのトップダウン形式をテクノロジーで克服し、参加者同士での意思決定を実現した(ようとしている)のです。
頑張った人が評価される
投票で全てが決まる
DAOの意思決定に関わるには、組織に何かしらの価値提供を行うことで投票権を得ることが前提になっています。
現時点では、組織から発行されているトークン(ガバナンストークン)を所持することで投票権を保持することができるものが多く見られます。
透明性が高い
ルールの透明性の高さもDAOの特徴の一つです。基本的に組織のルールは、あらかじめ定められたプログラムによって規定されています。
また、プログラムのコードも公開することで透明性を担保しているのです。ルールを破るようなメンバーに対しては、何かしらの制裁が加えられるようになっています。
ルールの運用も、スマートコントラクトという技術によって自動化されているため、誰かの意思によって勝手に制裁が下るということもありません。
DAO(分散型自律組織)の仕組み:ブロックチェーン、スマートコントラクト
DAOはなぜ中央管理者なしで動作するためには以下のような技術や仕組みが必要になります。
- ブロックチェーン
- スマートコントラクト
- ガバナンストークン
それぞれ詳細に解説していきます。
ブロックチェーンによって取引や契約を改ざんできないようにする
ブロックチェーンとは、取引内容を記載する履歴を保存するデータベースのようなものです。
ブロックチェーンは、取引の改ざんがほぼ不可能である点ができないため、DAOの透明性を保証を可能にします。
改ざんが不可能な理由には、ブロックチェーンが
- 一方向にしか流れない
- 一連の鎖になっている
という構造から来ています。
これらの特徴によって、過去の取引履歴を改ざんしようとしても、その後に行われた膨大な取引履歴全てを変更しなければならなくなります。これにより事実上改ざんが不可能となっているのです。
ブロックチェーンに関して別の記事で解説しているので合わせてお読みください。
スマートコントラクトによって自動化している
DAOはスマートコントラクトというプログラムによって実現されています。スマートコントラクトとは、取引や契約などの取引履歴を自動実行するプログラムのことです。
主にイーサリアムを中心に使用されている技術です。
スマートコントラクトはあらかじめ契約内容を定義した上で、契約内容をもとに行われる取引内容を自動実行してくれるのです。
この仕組みによって、だれかの意図によって勝手に物事が決まることがなくなり、民主的な組織運営が可能になるのです
ガバナンストークンによって投票というシステムを実現している
ガバナンストークンとは、イーサリアム上のプロジェクトが新しい機能の追加や除去、割合などを変更したり、新たな提案を行う権利を付与するトークンを指します。
DAO(分散型自律組織)のデメリット
分散型自律組織はいいことばかりではありません。そのデメリットはあります。それは以下の点が主にあげられます。
それぞれ詳細に解説して行きます。
意思決定が遅くなる
中央集権に比べて、どうしても権力が分散していると意思決定が遅くなります。これは、一党独裁の中国が、欧米や日本のような国家に比べて意思決定が速い点からもあげられます。
また、のちに述べますが、分散型ゆえに組織構造が複雑になってしまうリスクもあります。
当初に決めたルールが変更困難
当初に決めたルールは、スマートコントラクトによって自動的に適用されて行きます。そのため、当初に決めたルールを途中変更しようとするのが困難になります。
もし、ルールを変えるならば最初に組んだコードを一から組み直さなければなりません。これは、頭の悪い人が頭良くなるために脳みそを丸ごと入れ替えるのと似ています。
これは、現在みずほ銀行が、はるか昔に導入した昔の基幹システムを更新するのに苦労している事例からも想像ができるでしょう。
セキュリティがヤバめ
DAOはハッキング等のリスクに晒されるリスクがまだまだあります。
技術的な点でもまだ、ブロックチェーン技術が未発達であることがその背景にあります。そのため、今後の発展を待った方が良いかもしれません。
DAO(分散型自律組織)の活用事例と銘柄
続いて、DAO(分散型自律組織)を採用している、プロジェクトについて解説していきます。
ビットコイン(BTC)
ビットコインは,世界初のブロックチェーンを基盤とした仮想通貨です。
仮想通貨の中で最も取引されている銘柄です。もちろん時価総額は世界で一位です。
実は、ビットコインもDAOの一つと言われています。運営主体がおらず、開発の方向性やルール作りは誰かからのトップダウンで一方的に決められることがありません。
ビットコインという枠組み自体がDAOという組織携帯によって生み出されたのです。
Compound(COMP)
Compound Finance、通称Compound(COMP)とは、2018年にローンチされた仮想通貨の貸し借りを可能にするレンディング(貸仮想通貨)を提供しているDeFiサービスです。
こちらは、現在DAO化が進められています。投票権としての役割を持つガバナンストークンCOMPが発行されています。
COMPの所持数によって、Compoundの運営に対して影響力を持つことができます。
Uniswap(UNI)
Uniswap(UNI:ユニスワップ)とは、2018年11月にローンチDEX(分散型取引所)であり、DeFiアプリケーションです。
また、UniswapはガバナンストークンUNIを発行してDAO化が進められています。
UNIを所有していることで、Uniswapの運営や今後の方針に関して決定をする際に、投票を行うことができます。さらに、組織への提案などをする権利を得ることもできます。
和組DAO
和組DAOは、現在国内で数少ないDAOの一つです。
和組DAOは、web3やDAOに興味関心がある方、深く関わっている方たちが集まっています。日本をweb3立国にする上で、一般の人々にweb3の認知と理解を広めることをミッションにしています。
ここで、初心者はWeb3の学習をすることができ、起業家はVCとマッチングをすることが可能となっており、Web3の最前線が凝縮された素晴らしいコミュニティーとなっています。
番外編:MZDAO
2022年8月に元ZOZO代表、かつ剛力彩芽の元カレである前澤友作さんがMZDAOなるものを作りました(ちな、僕もとりあえず入会してます)。
月額500円という、DAOとはいうもののほぼ前澤さんの中央集権体制のオンラインサロンになっています。2022/8/5時点ではまだ、内容について詳細は公開されていません。
ただ、DAOっぽい感じになる予定なそうです。楽しみですね。
ただ、本人は現時点ではDAOではないことを認めており、これからDAO化していくそうです。
MZDAOに対する以下批判に答えます。
— 前澤友作┃MZDAOスタート (@yousuck2020) July 30, 2022
DAOじゃない、ただのオンラインサロン
→まだ今はね。事業はDAO的にやる予定。
中央集権的
→最初は僕が旗振らないとね
月額500円もかかる
→本気の人集めたいのと、相応な記事書くので
詐欺っぽい、法的にグレーでは?
→どのへんが?弁護士と入念に議論済み
また、これまで説明してきたDAOの事例も結局、管理者がいたりと完全な分散型組織を実現している例はないと断言して良いでしょう。
まだ、人類はDAOという夢の組織を実現できてないのが実情と考えて良いでしょう。
DAO(分散型自律組織)の課題と将来性
現在、完全なDAO(分散型自立組織)は実現している事例はないと私は考えています。そうした中で、まだまだ課題は盛沢山です。
法整備が追いついていない
DAOは、既存の法律で捌くことが難しく、まだ多くの国で法律が追いついていません。そのため、法整備が追いついていないのが現状です。
とはいえ、少しずつ法整備が進み始めており。米国ワイオミング州では、2021年にDAOを法人として登録することを認める法案が可決されました。
同様に、ヨーロッパのマルタ共和国でもDAOを有効な法人として認可が進められています。
組織構造が複雑になる
DAOを実験的に導入しているプロジェクトもありますが、やはりまだ課題は盛沢山です。
分散性を保とうとするとどうしても組織構造が複雑になってしまう事もあります。吉川絵美さんは以下のように、まだまだDAOの組織体制の在り方は今後も研究テーマになると言っています。
DAOが大きくなると、特定の組織機能がギルド化して、各ギルド内でガバナンス体制が築かれるなど組織構造が複雑になる。分散性を保ちながらスケールできるDAOの組織体制の在りかたについては今後も引き続き大きな研究テーマとなるだろう。
Forbse2022/06「DAOが新たなキャリアオプションに?〜DAOで働くとはどういうことか?」
さいごに
この記事では、DAO(自律分散型組織)について解説してきました。DAOとは、以下のような意味がある事がお分かりになったと思います。
管理者が存在せず、メンバーが共同所有を行うような組織のことを指します。
今後、DAOは株式会社や国家、小さなコミュニティーまで様々な組織に適用される可能性を秘めています。今後も注目のキーワードとなっています。