この記事では、乗数効果について解説していきます。三面等価の原則で言うところの支出の部分を主に取り扱うことになります。
- マクロ経済学の全体像がつかめる
- 財市場の概要をつかめる
- 均衡国民所得、乗数効果について理解できる
また、この記事はマクロ経済学の基礎的な部分を理解していた方が読みやすいと思います。興味のある方は以下の記事も合わせて読んでみてください。
経済学とは?
マクロ経済学の全体像
▼財市場シリーズ
① 国民所得・三面等価の原則
② 有効需要の原理・需給均衡式
③ 乗数効果
④ 均衡国民所得
⑤ 45度線分析・インフレーションギャップ
▼労働市場シリーズ
・AD-AS分析
・IS-LM分析
▼貨幣-債券市場シリーズ
・貨幣需要・貨幣供給
▼その他
・経済成長理論
・国際マクロ経済学
乗数効果とは?

均衡国民所得:総需要と総供給が一致している状態の国民所得
投資などの支出を増加させたることで有効需要が増加します。その際に増加した額より大きく国民所得が拡大することを乗数効果と言います。
より具体的に説明すると
生産者が投資を増やす→国民所得が増加する→消費が増える→国民所得が増える→さらに消費が増える→さらに国民所得が増加する→さらに消費が増える→・・
といったサイクルを経る事で国民所得が当初の投資額の何倍もの効果が国民所得に現れるのです。(以下の図参照)

乗数効果:投資などの支出を増加させたることで有効需要が増加します。その際に増加した額より大きく国民所得が拡大すること
乗数効果の求め方

均衡国民所得
乗数効果を理解する上で均衡国民所得の数式はおさえておく必要があります。簡単に解説します。詳細は以下の記事で解説しているので合わせて読んでみてください。
均衡国民所得は以下の形で決まります。
◆均衡国民所得
Y*=1/(1-c1)・(C0+I 0)
基礎消費(C0)と投資(I)は、常に一定になっています。これに限界消費性向をかけたものが均衡国民所得になります。
この時、基礎消費と投資が変化すると均衡国民所得(Y*)の値も変化します。この変化分を表す際には⊿(デルタ)を用います。これを式に表すと以下のようになります。
◆均衡国民所得の変化分
⊿Y*=1/(1-c1)・(⊿C0+⊿ I 0)
投資乗数
続いて経済における投資という要素が均衡国民所得にどのような影響を与えるのかを見ていきます。(以下の図の緑枠で囲った部分)

投資( I )の変化(⊿)によって均衡国民所得がどのように変化するのかを見ていきましょう。投資が変化した場合、⊿ I 0と表します。基礎消費は⊿C0=0とおくと
⊿Y*=1/(1-c1)・⊿ I 0
という数式が導き出せます。
ここから、投資を変化させたら(⊿ I 0)、その限界消費性向(1/(1-c1))を倍した分だけ均衡国民所得が変化する(⊿Y*)ことがわかります。
ちなみに限界消費性向(c1)とは、手元のお金が増えた時にどれだけお金を使うかを示す指標です。人々がお金を使えば使うほど経済は良い方向に向いていきます。(以下の図の緑枠で囲った部分)

限界消費性向:手元のお金が増えた時にどれだけお金を使うかを示す指標。限界消費性向が高いほど乗数効果が高くなる。
ここから言えるのは、限界消費性向が高いほど乗数効果は高くなるのです。
これを、数式で見ていきましょう。たとえば限界消費性向(c1)が0.5の時と0.9の時をそれぞれ1/(1-c1)に代入して比較してみましょう。
c1=0.5 のとき → 1/(1-0.5)=1/0.9=2
c1=0.9 のとき → 1/(1-0.9)=1/0.1=10
となります。
限界消費性向が0.5の時は2、で0.9の時は10になります。ここからもわかるように限界消費性向が高い時の方が、国民所得の増加分が多くなることがわかると思います。
そして、この倍をするというのが乗数という考え方になります。
ここまで見てきたものは投資が国民所得に与える影響です。これを投資乗数と言います。そのほかに、
・政府支出の影響を政府支出乗数
・課税の影響を租税乗数
・輸出の影響を輸出乗数
と言ったものがあげられます。
さいごに

最後まで読んでいただきありがとうございます!
この記事をきっかけで少し経済学について理解を深めたいと思った方は、以下の書籍から初めてみるのがおすすめです!
それは、『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編・マクロ編』です。
こちらはミクロ経済学に関して難しい数式を使うことなくわかりやすく説明してくれています。
これらの本を理解できたら、次に『スティグリッツ入門経済学』を読んでみるのもアリだと思います。ですが、正直、信じられないくらい分厚いので覚悟は必要かもしれません。
しかし、この本を読めば経済学という学問の全体像を知ることができるのでオススメです。