哲学

プラトンとは?彼の生涯とイデア論や洞窟の比喩、哲人政治についてわかりやすく解説。

プラトンは西洋哲学の源流とも言える偉大な哲学者です。彼の著作には『ソクラテスの弁明』や『国家』等の著作があります。

20世紀の哲学者の中では、現在までの哲学はプラトンの参照に過ぎないと言われるほど、哲学を勉強するにあたり必ず押さえておくべき人物です。

そこで、この記事ではプラトンその人と、彼の主要理論であるイデア論と国家論についてわかりやすく解説していきます。最後までお付き合いいただければと思います。

この記事で得られること
  • プラトンの人について知ることができる
  • プラトンの代表的な理論である「イデア論」、「国家論」について知ることができる

プラトンの生涯

プラトン(Platon 前427~前347)はソクラテスの弟子で、古代ギリシア哲学の最盛期であった前4世紀のアテネを代表する哲学者です。プラトンは、ペロポネソス戦争が勃発するなか、アテネで生まれました。

彼は、20歳前後の時に、ソクラテスにに弟子入りしています。当初政治家を志していました。しかし、ペロポネソス戦争の影響でアテネの民主制が不安定になりました。その中で、師であるソクラテスが政治的陰謀にあい、不当な判決で刑死に追い込まれました。

このアテネの民主制の腐敗とソクラテスの死をきっかけに哲学の道を進みはじめました。その後、教育等にも力をいれアカデメイアの創設をし弟子との議論に明け暮れました。前347年にプラトンは80歳という高齢で帰らぬ人となりました。

プラトンの思想:ソクラテスの死

プラトンは主にイデア論と国家論を中心に理論を展開した人物です。二つの理論については、後ほど詳細に解説します。ここでは、これらの理論が生み出された背景について解説していきます。

ソフィストたちの相対主義思想

プラトンが生きる時代には、アテネにおいてすでに民主制が導入されていました。

しかし、戦争等の影響で、民主制は腐敗していました。その中でプラトンは「正しい基準」を持った政治を追求するべきであると考えました。

その腐敗の一因にソフィストによる政治に対する大きな影響力がありました。彼らは、アテネの市民に対して自然科学や弁論術を教えることで報酬を得ている人たちです。

彼らは、絶対的な真実は存在しないという立場(相対主義)に立っており、相手を説得するということに重きをおいている者もいました。そのため、たびたび詭弁に陥ることもありました。

ソフィストとは?
  • アテネなどのポリスの市民に、弁論術や自然科学などを教えて報酬を受ける、いわば家庭教師たちのこと

ソクラテスの死

また、この民主制の腐敗の中で前399に、プラトンの師であるソクラテスがアテネで死刑になってしまいます。彼は「無知の知」という前提のもとアテネの有識者や政治家に議論をふっかけて言い負かしており、逆恨みを買って死刑になってしまいました。

この事件をきっかけに、プラトンはフィロソフィア(知を愛する者)としての思索生活に入ることになります。

プラトンのイデア論とは?

プラトンは、さまざまな論を展開した人物ですが、その中でも中心となるのがイデア論です。イデア論とは、現実の世界は、真実の世界(イデア)の影のようなものであるととらえ、そのイデアを追求することです。

イデア=究極の理想について

イデア論の詳細について深掘りしていきます。イデア(=真実在)とは、現実世界とは「別の世界(イデア界)」にある「究極の理想の存在」のことを指します。

これは、見たり聞いたりすることで感覚で捉えられる個々の事物はすべて仮の姿で、時代を超越した永遠不変の「イデア」が真の実在であると考えたのです。

例えば、手書きで書かれた三角形があるとします。ですが、これは「完全な三角形」ではありません。しかし、我々は手書きの三角形を見た時に三角形のイデアを想起するのです。他にも馬であろうと鳥であろうと、馬や鳥のイデアが存在するのです。

イデアとは?
  • 究極の理想のこと。プラトンは、真に実在するものはイデアであり、現実のものは仮の姿でしかないと考えた

善のイデア

プラトンのイデア論は、具体的なものだけにとどまらず、抽象的な価値にもイデアがあると考えました。プラトンは「善」「美」「正義」などの抽象的な価値についても、イデアが存在すると考えました。

さらにその中でも「善のイデア」が最高位のものであると考えました。馬とか鳥とか色々イデアがありますが、全てのイデアは「善のイデア」に集約されていくのです。

善のイデア
  • 全てのイデアは善のイデアに集約されると考えられた。善のイデアはイデア界の中で最高に位置する

補足:洞窟の比喩

イデアについて最も有名な「洞窟の比喩」がプラトンの『国家』の中で語られています。ここから、我々は身動きの取れない洞窟の中にいる囚人が現実の世界の我々です。あくまで、我々は火によって映った影からしか実在を見ることができないのです。

地下の洞窟に住んでいる人々を想像してみよう。明かりに向かって洞窟の幅いっぱいの通路が入口まで達している。人々は、子どもの頃から手足も首も縛られていて動くことができず、ずっと洞窟の奥を見ながら、振り返ることもできない。入口のはるか上方に火が燃えていて、人々をうしろから照らしている。火と人々のあいだに道があり、道に沿って低い壁が作られている。

『国家(下)』プラトン著 藤沢 令夫訳

国家論:哲人政治へ

プラトンの考える国は、一部の自分勝手な人たちが支配するのではなく、本当に存在するイデアを認識した何人かの哲学者によって支配されるべきだという考えでした。

プラトンが考えた正しい人間

プラトンによれば、そもそも人間には以下の理性・気概・欲望の3つの性質があるとします。これらを正しく用いるときそれぞれ知恵・勇気・節制の徳が実現します。

  • 理性→知恵
  • 気概→勇気
  • 欲望→節制

そしてこれらの徳が実現したときに人間の「正義」が実現するとプラトンは考えました。そして、知恵・勇気・節制・正義の四元徳が実現する考えたのです。

哲人政治へ

この人間のあり方をプラトンは国家にも適用しました。その際に、哲学者が統治者が束ねる国家(哲人政治)が理想であると考えました。

プラトンはその際に、統治者以外にも理想となるあり方を提示します。まず国家は以下の3つに分けられるとします。

  • 生産階級
  • 軍事階級
  • 統治者

その際に、生産階級が「節制」の徳を重んじ、「勇気」のある軍事階級であるべきとします。そして、「知恵」のある哲学者が統治者であることで国家全体で正義が実現すると考えたのです。つまり、国家の四元徳が実現するのです。

哲人政治について
  • プラトンの思索した、哲人王を統治者とする独裁政治体制の一種。

さいごに

20世紀の哲学者の中では、現在までの哲学はプラトンの参照に過ぎないと言われるほど、哲学を勉強するにあたり必ず押さえておくべき人物です。

そこで、この記事ではプラトンその人と、彼の主要理論であるイデア論と国家論についてわかりやすく解説してきました。

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