アリストテレスはソクラテス・プラトンと並ぶ西洋哲学に大きな影響を与えた哲学者です。彼は演繹法である三段論法や、形而上学等を生み出しました。
彼は、現在の学問全体の体系の源流を作った人物で「万学の祖」とも言われています。彼の哲学は、のちの近代哲学にも大きな影響を及ぼしました。
そこで、この記事ではアリストテレスその人と、プラトンやソクラテスとの対比、彼の「形而上学」や「論理学」ついてわかりやすく解説していきます。最後までお付き合いいただければと思います。
アリストテレスの生涯
アリストテレス(前384年 – 前322年)は、古代ギリシアの哲学者です。アリストテレスは前384年に、マケドニア王国で生まれました。
彼は、プラトンの弟子であり、17-18歳でアカデメイアに入学しそこで学問を納めます。プラトンが死ぬまでの20年間もの長期間学生として在籍しました。しかし、マケドニア王国とアテナイの対立が深まる中で、アカデメイアを辞さざるを得なくなりました。
その後、42歳のアリストテレスはのちのマケドニア王国のアレクサンドロスの家庭教師に招聘されました。その後、アレクサンドロスが王位に即位したのちにリュケイオンという学園をアテナイに設立しました。
しかし、アレクサンドロス大王の死後にアテナイでのマケドニア王国の影響力の低下とともに、アリストテレスはアテナイを去り、紀元前322年、62歳で死去しました。
アリストテレスの思想の背景
アリストテレスとプラトン
アリストテレスは「中庸」という中立的な立場を主張した哲学者です。プラトンやソクラテスは、イデア(究極の理想)を追い求めました。そのため、本質は別の世界(イデア界)にあると考えました。
しかし、アリストテレスは現実にこそ本質が宿っていると考えました。プラトンの哲学からは一歩引いた中立的な立場に徹した点が特徴です。
プラトンやソクラテスが祖国アテナイの危機の中で、必死で哲学を生み出しました。対照的にアリストテレスは、もともとマケドニア王国の植民地で生まれたこともあり「祖国なき」状態で哲学を生み出しました。そのため、一種一歩引いた状態でより中立的な哲学を生み出すことができたとも言えるでしょう
万学の祖
アリストテレスは、ソクラテス、プラトンと並ぶ西洋最大の哲学者の一人で「万学の祖」とも言われます。また、哲学の語源を生み出した人物でもあります(人間の本性が「知を愛する」ことにあると考えました。ギリシャ語ではこれをフィロソフィア=哲学)。
彼は、科学的な知的探求全般を哲学として体系的に分類しました。彼の学問体系の前提には、「論理学」が学問全般を学ぶ上での「道具」(オルガノン)とします。さらに、学問体系を以下の3つに分類しました。
- 「理論」(テオリア)
- 「実践」(プラクシス)
- 「制作」(ポイエーシス)
さらに、理論学を「自然学」、「形而上学」、実践学を「政治学」、「倫理学」、制作学を「詩学」に分類しましました。
アリストテレスの「形而上学」
アリストテレスは『形而上学』という著作を執筆しています。そもそも「形而上学」とは具体的な事物を「存在するもの」として捉えます。そして、「存在する」とは何かを探究する学問のことです。
プラトンが、真理は「別の世界(イデア界)」にあるといったのに対して、「現実にある事物」に宿る真理を探究しようとしたアリストテレスの姿勢が現れた著作です。
四原因説
アリストテレスは、現実の事物の成り立ちを四原因説という理論で整理しています。四原因説とは、物事の原因は、質料因・形相因・作用因・目的因の四つから 成り立っているという立場のことです。
現実にあるものに宿る真理を探究するために、あらゆる物事の成り立ちを説明することを目的に生み出されました。まず、「存在しているもの」が何でできているかが「質料因」です。そして、「存在しているもの」自体の本質や構造が「形相因」にあたります。
さらにその事物の運動や変化を引き起こす四原因説は「動力因」(ト・ディア・ティ)です。そして、それが目指しているものが「目的因」(ト・フー・ヘネカ)であると考えました。
可能態から現実態
これらの四原因の構造を持った存在者を動態的に見た場合に以下の二つの性質で表されます。
潜在的には可能であるものが、素材としての可能態(デュナミス)です。すでに生成したもので思考が具体化した現実態(エネルゲイア)です。
つまり、可能態は何か物事が起こる前の状態のことで、そこに何かしらが起こった結果を現実態と言います。このようにして、アリストテレスは存在者の静的かつ動的な構造を整理したのです。
アリストテレスの「論理学」
主語と述語
論理学は、論理を言語の構造から考える学問です。
主に、主語と述語(AはBである)の関係性から論理の構造を読み取ります。その際に主語は「特殊」、つまり個別的なこと。述語は「普遍」を表すとします。
さらに、アリストテレスは主語・述語ともに「実体・量・性質・関係・場所・時・位置・状態・能動・受動」で表すことができると考えました。
カテゴリー論
アリストテレスは、上位の分類を「類」、下位の分類を「種」、すぐ上の類を「最近類」、さらに下のレイヤーを「最近種」とカテゴリー分けしました。下位に至るほど普遍性が高くなっていきます。
例えば、人間・生物というカテゴリーがあった際に、人間は類であり生物は種になります。その際のカテゴリー分けの基準として「類」になるものには主語にはなっても述語になってはならないと考えました。
演繹法:三段論法
プラトンやソクラテスが対話的に本質を追求する立場をとったのに対して、アリストテレスは実際の経験的事実や一般的な事実をもとに演繹法的に考える立場を取りました。
これを追求した結果、体系化されたのが三段論法です。三段論法とは、「大前提」「小前提」そして「結論」という命題からなる論理的な推論のことです。
例えば以下のようなものが三段論法です。
- 大前提:全ての人間は死ぬ
- 小前提:アリストテレスは人間である
- 結論:ゆえにアリストテレスは死ぬ
また、三段論法の構成には4つのパターンがあります。参考までに以下の表をご覧ください。
記号 | 意味 | 量子化表現 | 命題の例 |
---|---|---|---|
A | 全称肯定判断 | ∀ | 全ての人間は生物である |
E | 全称否定判断 | ∀¬=¬∃ | 全ての人間は不死ではない |
I | 特称肯定判断 | ∃ | ある人間は学生である |
O | 特称否定判断 | ∃¬=¬∀ | ある人間は学生ではない |
さいごに
この記事ではアリストテレスその人と、プラトンやソクラテスとの対比、彼の「形而上学」や「論理学」ついてわかりやすく解説していきました。
アリストテレスは、哲学を勉強する人間にとって避けては通れない人物です。