この記事では、経済成長理論について解説します。
僕たちは、とても豊かな生活を送っています。コンビニで肉とご飯がたくさん入った弁当を食べ、毎年インフルエンザのワクチンを摂取して、綺麗な水を飲むことができています。…
しかし、ひと昔前には、伝染病は流行り早死にしたり、ご飯もろくに食べれないというのは当たり前でした。こうした生活水準の改善は、経済成長の成果によるものです。
マクロ経済学では、この経済成長を体系的かつ論理的に分析する手法が確立しています。
また、経済成長理論はマクロ経済の基礎をおさえた上で、理解することができます。マクロ経済学の記事を以下から読んでみてください。
経済成長とは?
ここでは経済成長に対する経済学の考え方をお話しします。
2つの経済成長率:保証成長率・自然成長率
経済成長を考える上で、最適成長を考える必要があります。最適成長の目安は、国民所得の変化の割合である経済成長率で測られます。
この経済成長率には
- 保証成長率(Gw:warranted rate of growth)
- 自然成長率(Gn:natural rate of growth)
があります。最適成長とは、
- 保証成長率(Gw)と自然成長率Gn)が一致している状態
- 財市場と労働市場が均衡している状態
が達成されている状態のことです。
この時、財市場が均衡しているときの経済成長率を保証成長率(Gw)と言います。
一方で、労働市場において完全雇用が達成されているときの経済成長率を自然成長率(Gn)と言います。完全雇用とは、失業者(厳密には非自発失業者)が存在しないことを指します。
国民所得は資本と労働の組み合わせ:生産関数
企業は、資本と労働を組み合わせて財を生産します。これにより国民所得が生み出されます。
この2つの生産要素の組合せをしめしたものが、生産関数です。生産関数とは、生産要素(労働・資本)の投入量と、投入の結果えられる生産量の関係をあらわしたもののことです。
資本
国民所得(Y)は、資本(K)と労働(L)によって生産されます。資本(K)と国民所得(Y)の比率は、資本係数(v)であらわします。
資本係数(v)とは、生産量1単位を生産するのに必要な資本(K)を示します。資本係数から、その国の経済の生産の仕組みがわかります。
これを式であらわすと次の形になります。
資本係数(v)=資本(K)/国民所得(Y)
労働力
労働(L)と国民所得(Y)の比率は、労働者1人当たりの国民所得(y)であらわします。この指標は、労働生産性といって、その国の労働者が生み出す価値を見ることができます
式であらわすと次の形になります。
労働者1人当たりの国民所得(y)=国民所得(Y)/労働力(L)
2つの経済成長モデル
経済成長の考え方にはケインズ派と新古典派の二つで考え方が異なります。
ケインズ派はハロッド=ドーマー・モデルというものを提唱しています。このモデルは政府の役割を重視しており、市場が自動調節するという前提を否定しています。
一方でソロー=スワン・モデルは新自由主義と呼ばれるアダムスミスの自由放任主義を重要視する潮流が生み出しました。
ハロッド=ドーマー・モデル
ソロー=スワン・モデル
の二つを解説していきます。ではその前に、2つのモデルを考える上で重要な、経済成長率と生産関数について押さえておきましょう。
ケインズ派の経済成長理論:ハロッド=ドーマー・モデル
ハロッド=ドーマー・モデルとは?
ハロッド=ドーマー・モデルとは、ケインズ派による経済成長を分析するモデルのことになります。
- 財市場の均衡(保証成長率:Gn)
- 労働市場が完全雇用な状態(自然成長率:Gw)
一致する数式を導出します。この数式から、市場に任せていては保証成長率(Gw)と自然成長率(Gn)が一致した最適成長は実現しにくいことを表すことができます。
財市場の均衡:保証成長率(Gw)
では、財市場の均衡を表す保証成長率(Gn)について解説していきます。
財市場が均衡する条件は、投資(I)と貯蓄(S)が等しいことです。なぜなら、人々の貯蓄が投資にまわって生産がおこなわれるからです。
この時、人々が所得のうち貯蓄に回す割合を貯蓄率(s)といいます。
保証成長率(Gw)は貯蓄率(s)と資本係数(ⅴ)で表すことができます。
数式で表すと以下のようになります。この数式が成り立つまでのプロセスは煩雑です。後日、追記します。
保証成長率(Gw)=貯蓄率(s)/資本係数(v)
まずは、生産に必要な資金を貯蓄して、それを資本としてつかうという関係をイメージとしてとらえることが重要になります。
また、資本は使えば使うほど価値が下がっていきます。この価値の低下を固定資本減耗と言います。
固定資本減耗を考慮したい場合の保証成長率(Gw)は次の形になります。
保証成長率(Gw)=貯蓄率(s)/資本係数(v)-資本減耗率
機械や設備が古くなる分だけ、成長率は低下します。
このモデルを理解する際に注意すべきは、資本係数(v)は固定的であるということです。
なぜなら、財の生産方法が硬直的であると考えられているからです。労働力と資本の組み合わせが限定的なのです。
そのため、生産関数はL字形のレオンチェフ型になります。
労働市場が完全雇用が達成されている状態:自然成長率(Gn)
労働市場で完全雇用が達成されている自然成長率(Gn)は次の形になります。
自然成長率(Gn)=労働人口増加率
なぜ経済成長率が労働人口の増加率と一致するのか。それは労働人口の増加率と同じ比率で経済成長すれば、労働市場は完全雇用を達成している状況であると考えるからです。
技術進歩の要素を考慮すると自然成長率(Gn)は次の形になります。
自然成長率(Gn)=労働人口増加率+技術進歩率
技術革新は労働力を代替することができます。つまり、人口が減少しても技術革新すれば減少分を補うことができるのです。
最適成長条件
これまで述べてきたことから、
保証成長率(Gw)=貯蓄率(s)/資本係数(v)とGn=労働人口増加率が一致する部分が最適成長条件であることがわかると思います。
この2つの式を組み合わせると最適成長条件を導き出すことができます。
貯蓄率(s)/資本係数(v)=労働人口増加率
固定資本減耗と技術革新を考慮する場合は
貯蓄率(s)/資本係数(v)-資本減耗率=労働人口増加率+技術進歩率
と表すことができます。
不安定原理
これらの式からケインズ派のいう最適成長は達成しにくいということがわかります。
なぜなら、資本係数が固定的だからです。
また最適成長が達成しにくいことを不安定原理(ナイフエッジ原理)と言います。
労働人口増加率に関しては、人間がコントロールすることはなかなかできません。すると、最適成長の条件である貯蓄率(s)/資本係数(v)の関係が成り立つこと難しくなるのです。
だからこそ、ケインズ派は政府による財政政策を主張したのです。
新古典派の経済成長理論:ソロー=スワン・モデル
ソロー・スワン・モデルとは?
新古典派は経済成長、特に最適成長は達成されやすいと考えました。それを表したのがソロー・スワン・モデルです。
なぜなら資本係数(v)が可変的であるためです。つまり、国民所得(Y)に対する資本(K) の比率の柔軟性が高いのです。
もし最適成長の状態からバランスが崩れたとしても、生産システムが柔軟なので、いずれ最適成長の状態に回復します。つまり市場原理が働いて調整されると考えているのです。
ソロー・スワン・モデルの生産関数をえがくと、原点に対して凸型のコブ=ダグラス型になります。
この生産関数では、資本と労働は代替的であると考えます。例えば、労働力が不足してもすぐに資本に投資して補うことができると考えているのです。
ソロー=スワン・モデルは、より柔軟な生産システムを想定していると考えてください。
では、最適成長を実現する条件である以下の2つについて解説していきます。
・財市場の均衡(保証成長率:Gn)
・労働市場が完全雇用な状態(自然成長率:Gw)
財市場の均衡:保証成長率(Gw)
ソロー=スワン・モデルの保証成長率(Gw)は、貯蓄率(s)と1人当たり国民所得(y)と資本装備率(k)を用いて表すことができます。
数式は以下のようになります。
保証成長率(Gw)=貯蓄率(s)・1人当たり国民所得(y)/資本装備率(k)
資本装備率(k)とは、企業内で労働者が使うことのできる資本の割合のことです。資本集約度ということもあります。
こちらのプロセスに関しても、複雑ですので、後日まとめて記載いたします。
労働市場が完全雇用が達成されている状態:自然成長率(Gn)
自然成長率に関してはハロッド=ドーマー・モデルと同じです
自然成長率(Gn)=労働人口増加率+技術進歩率
最適成長条件
最適成長条件はGw=Gnは以下のようになります。
貯蓄率(s)・1人当たり国民所得(y)/資本装備率(k)=労働人口増加率+技術進歩率
「資本減耗」と「技術進歩」があると仮定すると、最適成長条件は次の形になります。
貯蓄率(s)・1人当たり国民所得(y)/資本装備率(k)ー資本減耗率=労働人口増加率+技術進歩率
さいごに
最後まで読んでいただきありがとうございます!
この記事をきっかけで少し経済学について理解を深めたいと思った方は、以下の書籍から初めてみるのがおすすめです!
それは、『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編・マクロ編』です。
こちらはミクロ経済学に関して難しい数式を使うことなくわかりやすく説明してくれています。
これらの本を理解できたら、次に『スティグリッツ入門経済学』を読んでみるのもアリだと思います。ですが、正直、信じられないくらい分厚いので覚悟は必要かもしれません。
しかし、この本を読めば経済学という学問の全体像を知ることができるのでオススメです。