この記事では、マーシャルプランについてわかりやすく解説します。マーシャルプランは東西冷戦を経済的に深刻化させる要因となりました。
この出来事は、戦後の世界を理解する上で非常に重要となっています
また、この記事は以下の書籍をもとに執筆しています。あわせてお読みください
マーシャルプランの背景:冷戦のはじまり
冷戦の始まりとしては、ドイツ第二次世界大戦中の1945年のヤルタ会談と言われています。
1946年にイギリスの前首相チャーチル「鉄のカーテン」演説をおこない、ソ連の東欧諸国囲い込みを批判し、自由主義陣営の結束を呼びかけました。
少なくとも1947年頃から冷戦という言葉が使われるようになります。
こうした東西の分裂に拍車をかけたのがマーシャルプランでした。
マーシャルプランとは
マーシャルプラン(欧州復興計画)とは?
東西冷戦を経済的に分裂させた出来事がマーシャルプランです。
特に第二次世界大戦後、ヨーロッパの産業は大打撃を受けます。復興のために多くの復興資材が必要となっていました。
そこで、資材を海外から輸入する必要があったのですが、ドルが不足していました。ブレトンウッズ体制の成立で貿易にはドルが必要だったことが背景にあります。
そうした中で、第二次世界大戦の影響を大きく受けなかったアメリカは、西側諸国への支援をする必要があったのです。
ジョージ・マーシャルによる欧州復興計画の発表
そこで1947年にジョージ・マーシャル米国務長官は、ヨーロッパ全土に対して大規模な援助を行う方針を発表します。
1947年から52年にかけて総額130ドルに上る援助をヨーロッパに対して行いました。
これによりヨーロッパのドル不足を解消し、戦時需要の消滅しつつあったアメリカの国内産業を潤すことになりました。
当初は東ヨーロッパも範囲に含まれていたのですが、ソ連が東ヨーロッパへの影響力を増しており、ソ連側の諸国はマーシャルプランへの受け入れを拒絶しました。
マーシャルプランへの対抗馬:コメコン
コミンフォルムとコメコン:社会主義諸国の結束
マーシャルプランを東ヨーロッパ諸国が拒否した背景には、ソ連がマーシャルプランに対して警戒をしていたことがあります。
そこで1947年にコミンフォルム(共産党情報局)を設立し、東側諸国に対する締め付けと監視を強化してました。さらに、マーシャルプランに対決する形で、1949年コメコン(経済援助相互会議)をソ連圏に成立させています。
マーシャルプランは東西の経済的分裂の引き金に
結果として、マーシャルプランは、資本主義諸国の西ヨーロッパ諸国に限定され、受け入れ国は西ヨーロッパの16カ国になりました。
一方で、東ヨーロッパはコミンフォルムやコメコンの制度に内包されることになります。結果として、ヨーロッパの東西対立が経済的側面で深めることになったのです。
冷戦の固定化と拡大
1948年以降、ソ連の核開発の進展によって東西の対立は先鋭化し、先ほどのマーシャルプランをきっかけに経済的な対立を深めていきました。
その中で、冷戦はドイツの東西分裂や中華人民共和国の建国のように、拡大していきました。
ヨーロッパの東西分裂:軍事同盟の成立と東西ドイツの分裂
マーシャルプラン以後、東西対立は深まることになります。西側では軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)が1949年に成立し、ソ連への包囲網を構築していきます。
1955年には対抗して、東側の軍事同盟であるワルシャワ条約機構が東側で成立しています。
ドイツは1949年にドイツ連邦共和国(西ドイツ)とドイツ民主共和国(東ドイツ)が成立し、東西の分断体制が固定化されました。さらに、ベルリンの壁が1961年に建設されドイツの東西分裂は根深いものになっていきました
アジアの東西分裂:中華人民共和国の成立と朝鮮戦争
アジアにおいては1949年に共産党政権である中華人民共和国が成立しました。これにより東西冷戦はアジアにも波及していくようになります。中国とソ連は中ソ友好同盟相互援助条約を締結し結束を深めました。
1950年の朝鮮戦争アメリカと中国が参戦し、事実上両陣営の直接対立となりました。
1951年、サンフランシスコ講和会議会議で主権を回復した日本は、アメリカと日米安全保障条約を締結して軍事同盟を結び日本の再軍備を進めました。
アメリカは同様に米比相互防衛条約・ANZUS条約などで太平洋に同盟網を拡げていきました。
軍拡競争と宇宙開発の時代へ
冷戦の間、ソ連とアメリカは、直接的に戦火を交えることはありませんでした。しかし、冷戦の期間である第二次世界大戦末期から1980年代終わりまでに、
- 軍備の拡大や核開発競争
- 宇宙開発競争
が繰り広げられました。
また、この対立によってドイツの分断、朝鮮戦争、ベトナム戦争などの局地的な戦闘が発生することもありました。
さいごに
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