この記事では貿易理論について解説していきます。貿易理論は、ミクロ経済学において外国の影響などを考慮した理論になります。
この記事はミクロ経済学の基礎的な知識を持った上で読んだ方が理解が早いと思います。参考までに以下の記事も読んでみてください。
貿易理論とは?
貿易理論とはミクロ経済学の一分野になります。簡潔に言えば、国と国の貿易を経済学的に分析する理論のことです。
ミクロ経済学では主には国を超える商品取引を分析する経済学の分野がほとんどでした。一方で、貿易理論は、国をまたいだ理論です。
貿易理論の種類には
- リカード型(リカード・モデル)
- ヘクシャー・オリーン型(HOモデル)
の2種類があります。次節で詳細に解説をしていきます。
リカード型(リカードモデル)貿易理論:比較生産費説
リカード型貿易理論は、デヴィッド・リカード(1772年4月18日 – 1823年9月11日)が『経済学と課税の原理』の中で展開した理論です。
デヴィッド・リカードはイギリスの経済学者で自由貿易の重要性を唱えました。彼の理論の中で特に有名なのが比較優位の原理です。この理論は現在でも重要性を失っていない理論です。
また、リカードに関しては以下の記事で解説しています。合わせてお読みください。
それでは以下で詳細に解説していきます。
絶対優位と比較優位
比較優位の原理を理解する前に、絶対優位について解説します。
絶対優位(absolute advantage)とは、ある国がべつの国に比べて効率的に財を生産でき、他の国に比べて労働力や資本を投下しなくても効率よく利益が獲得できる状態のことです。
簡潔にいうと絶対的に片方の国がどんな財でもコスパよく生産をする事に長けていて、もう片方はダメダメという感じです。
例えば、ポットと船舶の財と、イギリスとフランスしかない経済を想定してください。
その際に
- イギリスはポットと船舶両方の生産をコスパよくできる
- フランスはどちらも微妙という例です。
そのため、輸出の際にイギリスがすべての財の覇権を握るだろうという考えです。これが絶対優位になります。
しかし、国際経済においては別のパターンも考えられます。それが次に説明する比較優位の状態です。別名比較生産費説になります。
比較優位の原理(比較生産費説)
比較優位とは、ある一定の状況下において相対的に、生産が得意な財がある状態のことを指します。
比較優位の原理とは、それぞれ相対的に生産が得意な財が存在が存在するから、自国で生産しないものは貿易で賄った方が良いというものです。
ちなみにここではいう生産が得意とは、費用をかけずに生産ができるということです。
リカード型貿易理論では生産費に着目する点が特徴であることを抑えてください
絶対優位ですと、どちらかの国が覇権を握る身も蓋もない状況でした。
それが、比較優位の原理ですと、どちらの国もいい感じに分担して生産、輸出をすることができます。
実際に事例を見ていきましょう。先ほどの絶対優位と時と同じく、2国2財の経済を想定してみて管しあ。
比較優位の例
イギリス:2財どちらも生産が得意な国
- 船舶の生産に関してかなり得意(生産力4)
- ポットの生産に関してやや得意(生産力3.5)
フランス:2財どちらの生産も微妙な国
- 船舶の生産に関してはかなり不得意(生産力1)
- ポットの生産に関してやや不得意(生産力3)
この場合、イギリスはフランスに比べ船舶とポットの生産で絶対優位に立っています。
しかし、フランス国内ではポットの生産が相対的に得意です。これが、フランスはイギリスに比べてポットの生産において比較優位にあるということになります。
一方で、イギリスは船舶の生産においてフランスに比較優位にあると言えます。
そこで、それぞれ得意な方の財の生産に特化して、足りない財は貿易で賄えば2国間で効率的に財を生産することができるのです。
ヘクシャー・オリーン型貿易理論
どのような財に比較優位をもつかについてこれまで、生産費に着目しました。しかし、比較優位には、いくつかの考え方があります。ここでは代表的なものとしてヘクシャー=オリーンの定理をみていきましょう。
ヘクシャー=オリーンの定理とは、各国は自国に相対的に豊富に存在する生産要素を集約的に用いて生産した財に比較優位をもつという意味です。
ここで重要なのは、ヘクシャー=オリーンの定理は生産費ではなく生産要素の量に着目しているという点です。ちなみに生産要素とは労働力・土地・資本のことを指します。(こちらの記事で解説しています)
例えば、アフリカとイギリスのケースで考えてみましょう。
- イギリス:2財どちらも生産が得意な国
- 土地が多い(4)
- 資本力が小さい(0.5)
- アフリカ:2財どちらの生産も微妙な国
- 土地が少ない(1)
- 資本力が大きい(4)
生産要素において土地の点でアフリカが優位に立ち、イギリスは資本力の点で優位に立っています。
それなら、中途半端にアフリカは工業生産をせずに土地を使って農業に集中する。一方で資本力で優位に立っているイギリスは少ない土地で農業をするのではなく、機関車の生産に特化した方が良いのです。
結果として、イギリスは機関車の生産においてアフリカに比較優位にあり、アフリカは農業生産においてイギリスに比較優位にあるという状況になるのです。
相対的に豊富に存在する生産要素を集中的に投下して、生産活動をおこなえばいいのです。この集中的に投下することを、集約的に生産するといいます。
さいごに
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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こちらはミクロ経済学に関して難しい数式を使うことなくわかりやすく説明してくれています。
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