この記事では、部分均衡分析を詳細に解説します。部分均衡分析とは、最適な資源配分がどうすれば達成できるのかを分析するものです。主に1つの財に関する需要曲線と供給曲線をもとに分析を進めます。
ミクロ経済学に関してまだ理解が深められていないという方はこちらの記事も合わせて読んでみてください。
部分均衡分析とは?
部分均衡分析について解説をしていきます。この理論の提唱者は、アルフレッド・マーシャルというイギリスの経済学者です。新古典派の経済学を代表する研究者です。
部分均衡分析は、1つの財市場における最適な資源配分を分析します。その際に、他の市場との相互依存関係は無視します。
分析の目的としては、総余剰を最大にするような最適な資源配分を見つけ出すことにあります。
一方で、一般均衡理論は全ての市場を対象にした理論になります。そして総余剰ではなくパレート最適な状態を理想とします。
提唱者はレオン・ワルラスです。部分均衡理論はのちに説明する余剰分析を手法としますが、一般均衡理論では、エッジワース・ボックスという手法を使用する点に違いがあります。
また、部分均衡理論も一般均衡理論も完全競争市場を前提としていることは押させておきましょう。
一般均衡理論について詳細を知りたい方は以下の記事を読んでみてください。
一般均衡理論 | 部分均衡理論 | |
---|---|---|
提唱者 | レオン=ワルラス | アルフレッド=マーシャル |
意味 | 全ての市場を均衡させる 価格・数量に関する理論 | 1つの財市場を均衡させる 価格・数量に関する理論 |
理想とする状態 | パレート効率性の実現 | 総余剰の最大化 |
市場の 調整過程 | ワルラス調整過程・価格が調整される | マーシャル調整過程・数量が調整される |
分析手法 | エッジワークス・ボックス | 余剰分析 |
市場均衡とは?
市場均衡
需要と供給が等しくなっている状態のことを市場均衡といいます。
この時の価格を均衡価格(P)、取引量を均衡取引量(Q)といいます。需要曲線と供給曲線の交点を市場均衡点(E)といいます。
市場の調整機能
市場には不均衡状態から均衡状態にいたるまでの調整機能があります。いわば神の見えざる手とも言えます。
部分均衡理論では、マーシャル調整過程を経ることで市場均衡が達成されるとします。
取引量の調整:マーシャル調整過程
需要と供給が不均衡の際に、価格の調整がおこなわれる過程のことをマーシャル調整過程といいます。こちらは部分均衡理論での前提となる市場均衡のプロセスです。
この調整過程に当てはまる財には、耐久財が多くみられます。耐久財とは、長持ちする財のことです。
具体例として、自動車や家電製品、家などがあげられます。自動車などは、需要が大きい場合に大量生産体制を整えることで取引量の調整をおこないます。
これが身近なマーシャル調整過程です。
補足:ワルラス調整過程
需要と供給の不均衡の時、価格において調整がおこなわれることをワルラス調整過程といいます。こちらは一般均衡理論で前提となる市場均衡のプロセスです。
この調整過程は非耐久財に多くみられます。非耐久財とは、消耗品などの長持ちしない商品に当てはまります。
具体例として、超過供給の場合であればスーパーの閉店前の惣菜の値引きセールがあります。販売者側は、売れ残ることで供給過多になってしまいました。それを価格を調整することで売り切ろうとするのです。これが身近なワルラス調整過程です。
余剰分析について
余剰分析では、最適な資源配分について分析をおこないます。
消費者余剰
ある財に対して消費者が支払いたいと思う最大金額から、実際に支払われた金額を差し引いたものを消費者余剰といいます。
支払いたいと思う最大の金額は需要曲線上の点にあらわせされます。この消費者余剰をわかりやすくいうとお買い得感のことをいいます。
以下のグラフで考えてみましょう。以下の場合、市場均衡点Eと均衡価格P”と縦軸、需要曲線で囲まれた部分が消費者余剰になります。
市場均衡価格の場合、それ以上の価格を出しても良いと思っている人にとってお買い得感を感じることになるのです。これが消費者余剰です。
生産者余剰
ある財の生産者が販売してもよいと考える最小の価格から、実際の販売価格を差し引いた分を生産者余剰といいます。
生産者余剰とは、わかりやすくいうと儲けた感のことを指します。
以下のグラフで考えてみましょう。以下の場合、市場均衡価格(P”)と均衡価格(E) と縦軸を囲んだ部分が生産者余剰になります。
この時、均衡価格の場合、それ以下でなら売ってもよいと考える人は儲かった感を感じることになるのです。
総余剰
これまで説明してきた、消費者余剰と生産者余剰の合計を総余剰といいます。総余剰は、完全競争市場の時に総余剰は最大になります。
グラフで表すと先ほどの消費者余剰と生産者余剰を組み合わせた部分が総余剰となります。
また、総余剰が課税や規制の影響で総余剰が小さくなることを厚生損失といいます。厚生損失に関しては不完全市場のところで取り扱います。
さいごに
最後まで読んでいただきありがとうございます!
この記事をきっかけで少し経済学について理解を深めたいと思った方は、以下の書籍から初めてみるのがおすすめです!
それは、『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編・マクロ編』です。
こちらはミクロ経済学に関して難しい数式を使うことなくわかりやすく説明してくれています。
これらの本を理解できたら、次に『スティグリッツ入門経済学』を読んでみるのもアリだと思います。ですが、正直、信じられないくらい分厚いので覚悟は必要かもしれません。
しかし、この本を読めば経済学という学問の全体像を知ることができるのでオススメです。