この記事では、経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスについて解説していきます。
彼の弟子であるハイエクやフリードマンは新自由主義として有名です。彼らほど知名度が低かったりしますが、彼なくして新自由主義思想はあり得なかったでしょう。
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ミーゼスの生涯
ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、オーストリア学派の経済学者です。
1881年にオーストリア=ハンガリー帝国のレンヴェルクで生まれました。その後、ミーゼス一家はウィーンに転居しました。
そのままミーゼスはウィーン大学で経済学と法学を学び、1906年に法学博士号を取得しました。その後、オーストリア商工会議所やオーストリア帝国財務省で経済顧問を務めました。
1913年から1930年代後半にはウィーン大学の教授を務めています。教授在任中に勃発した第一次世界大戦では、オーストリア=ハンガリー軍に砲兵大尉としてとして従軍しています。
第二次世界大戦ドイツによるオーストリア併合の際に、思想が危険視され逃亡せざるを得なくなります。のちに解説しますが、自由主義的な思想はナチズムの思想と対立するからになります。
結果的にロックフェラー財団の援助のもとアメリカへ移住します。1その後はニューヨーク大学経営学大学院にて客員教授を務め、生涯を終えます。
ミーゼスの思想
ミーゼスはオーストリア学派に属する経済学者で、社会主義論争などに参加し、自由主義を擁護しつつも、社会主義や計画経済に批判的でした。
ここでは、
- 自由主義経済を擁護したミーゼスの思想に大きな影響を与えたオーストリア学派
- ミーゼスが計画経済への批判をした社会主義計算論争
について解説します。
自由主義経済への信頼:オーストリア学派のミーゼス
ミーゼスはオーストリア学派に属する経済学者です。彼は自由主義経済に絶大なる信頼を寄せました。
オーストリア学派は、19世紀後半の限界革命を契機にオーストリアで成立した学派です。経済を限界効用などの主観的要素を軸に分析する限界効用学派の一つです。カール・メンガーを始祖とします。
この学派の第3世代にミーゼスはあたり、第1次世界大戦後に華々しく活動しました。
彼は、ウィーン大学在学中にメンガーの『経済学原理』によって経済学に目覚め、自由主義経済を擁護する理論を生涯に渡り展開していきます。
彼の思想は、後続のハイエクやフリードマンらの新自由主義者に継承されることになります
計画経済への批判:社会主義計算論争
ミーゼスは弟子のハイエクとともに、1920年代から40年代にかけて盛んになった社会主義計算論争というものに参加しています。この論争は、社会主義が実行可能かどうかをめぐる議論でした。
社会主義側のオスカーランゲは、市場社会主義を主張しました。これは中央政府が企業の利潤を一定程度認めつつ、価格の決定を政府が担う経済のことです。要するに政府が経済をコントロールしておけば経済はいい感じになるという主張です。
それに対して、ミーゼスは市場による価格決定と利潤追求の完全な自由が認められる制度を持つ社会だけが反映すると主張しました。つまり、市場に任せておけば経済はいい感じになるから、政府は引っ込んでろという考えです。
この論争をきっかけにミーゼスは『ヒューマン・アクション』という書籍を出版し、注目を浴びることになります。
『ヒューマン・アクション』
ミーゼスは、自由主義を擁護する中で
- オーストリア学派の経済理論の統一
- 社会主義とファシズムへの批判
を目的として『ヒューマン・アクション』を執筆しました。
ジュネーブ滞在中に書き上げた『国民経済学、行為と経済の理論』(1940年)を英語で書き直したものになります。英語で書き直した理由として、生まれ故郷のオーストリアがドイツにより併合され、アメリカに亡命したためになります。
アメリカでは幅広い読者を獲得し大きな反響を呼びました。
経済学とは何か?
ミーゼスは、経済学を倫理や義務とは無関係であり、あくまで人間の行為を対象とする科学であると考えました。
経済学は善や悪といった視点とは全く無関係なのです。あくまで客観的かつ中立的に市場の独自の規則性を人間の行為を通して見つけ出すことが重要なのです。
マルクス主義や社会主義などのように、政治的偏見を持って経済を分析してきた人たちは、これまで失業や戦争などを解決することに失敗してきたとミーゼスは言います。
その一方で、アダムスミスから始まる古典派経済学は自由主義な価値観と携帯を持った政府の誕生を促進し、社会はより豊かになったとしています。この豊かさと発展を支えたのは自由放任主義なのだと考えたのです。
だからこそ、ミーゼスは客観的な科学としての経済学こそがあるべき姿だと主張しました。
ミーゼスの自由主義
ミーゼスはその上で、自由主義を擁護します。
経済は個人が不安を解消するために行動をする中で生まれてきた結果、今の文明社会が生まれました。
しかし、マルクス経済学は、個人ではなく物質的な外部の要素が社会を決定すると考えました。
こうした考えに対してミーゼスは否定します。あくまで社会は個人の自発的な行動によって生まれるのだと。
だからこそ、政府は、基本的な身体の保護や国防のために存在すればよく、市民の行動を制限してはならないのです。
国民一人一人が自分の人生を選択することができる自由市場国家こそが一番優れているのです。
さいごに
さいごまで読んでいただきありがとうございます。ここではオススメの書籍を紹介します。
ミーゼスについての書籍についてわかりやすく解説した書籍は非常に少ないのですが、その中でオススメなのが、『資本主義はいかに衰退するのか』です。ハイエクやシュンペーターとの関係性を含めた上でミーゼスの思想を深く理解できます。
また、ミーゼスの主著『ヒューマン・アクション』もあります。めちゃくちゃ難しいです。しかし読んでみる価値もあります。
正直、読みきれなくても本棚に置くだけで本棚偏差値は爆上がりすることは間違いなしです。