この記事では、限界革命について簡単、かつわかりやすく解説していきます。
限界革命は、アダムスミスやリカードなどの古典派経済学を現代の大学で習うような経済学に進化させるきっかけとなった出来事です。
ワルラス・ジェヴォンズ・メンガーと言う経済学者が主に限界革命を引き起こした人物になります。
また、経済思想について興味がある方は、『はじめての経済思想史:アダムスミスから現代まで』はオススメです。
また他の経済学者にも興味がある場合は以下の記事も参考にどうぞ!
限界革命とは?
限界革命とは、限界効用から、マーシャルの需要と供給の均衡理論に終わる理論上の革新のことを指します。レオン・ワルラス、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ、カール・メンガーの3人が革命の立役者でした。
マーシャルに関しては、別の記事で解説しているので合わせて読んでみてください。
労働価値説から効用理論へ
限界効用以前の経済学と限界革命以降の経済学の違いには、モノの価値の定義の違いにあります。
限界革命以前のアダム・スミスに始まる古典派経済学は、労働価値説を主軸に置いていました。労働価値説とは商品の価値は労働力によって決まると言う考えのことです。
しかし、限界革命以降はイギリスの功利主義の影響もあり、人の快楽、つまり効用をモノの価値の主軸に置く効用理論が主流になります。効用とは、財・サービスを消費した際の満足度のことです。
この前提をもとに限界効用理論が確立されていくことになるです。
限界効用の発見とその後
レオン・ワルラス、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ、カール・メンガーの3人が同時期に限界効用理論を確立することで、限界革命が始まりました。
のちに詳細に解説しますが、限界と言う概念は、経済学では追加という意味です。そして、限界効用とは、1単位商品を消費するたびに追加で得られる効用のことです。
限界効用理論は、現在のミクロ経済学において未だに重要な理論として残っています。そして限界革命は、新古典派経済学という科学的に経済学を取り扱うことを志向する潮流の端緒といっても良いでしょう。
特に、彼らの限界効用理論はマーシャルにも受け継がれ、需要供給曲線を導出する根拠の1つとなっています。
限界効用理論について
限界効用理論は、消費者理論の一部を構成しています。以下の記事も合わせてお読みください。
効用理論とは?
限界革命が起こる上で、前提となるのが効用理論の発見です。限界革命当時は、イギリスの功利主義の影響もあり人の快楽、つまり効用モノの価値の主軸に置くようになります。
効用とは、簡単に言うと消費者が抱く満足度のことを指します。効用はグラフで表すと以下のようになります。
限界効用と限界効用逓減の法則
この効用をさらに分解して理解すると限界効用とは財の消費量が1単位増加したときに得られる効用の増加分のことを指します。そして、限界効用は効用曲線の接線の傾きで表すことができます。
限界効用は逓減すると言われています(限界効用逓減の法則)。グラフで表すと以下のような形になります。消費量が増えるたびに限界効用を表す接線の傾きが小さくなっていることがわかると思います。
例えば、飲み会でビールを飲んだ時に1杯ごとに得られる味しさが限界効用です。また、ビールの美味しさは1杯目がピークで2杯目、3杯目と1杯ごと減っていくことがわかると思います。これが限界効用逓減の法則です。
限界革命のトリオ
では、続いて限界革命を始めたトリオのワルラス・ジェヴォンズ・メンガーについて解説していきます。限界効用の発見は、偶然にも同時期に三人の経済学者が発見しました。
ここではその限界革命トリオについて解説していきます。
ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ
ジェヴォンズはイギリスの経済学者で論理学者です。
彼は1835年、リヴァプールで生まれした。父トーマス・ジェヴォンズは、法律・経済に関する文筆家でした。その傍ら、鉄の商人として働いていました。
ジェヴォンズは効用理論を1860年の段階で発見しています。3人の中では一番早いと言えるでしょう。彼は、経済学は本質的に数学的な科学であると言う考えのもと『経済学の一般的数学理論』での論文で明確に限界効用理論を展開しました。
当初は、あまり注目されませんでしたが、彼の理論が完全な形で展開された『経済学理論』が発表された1871年に注目が集まりました。
彼は、財を1単位消費する毎に消費者が得ることができる効用や価値は、消費者が財の1単位獲得する毎に得る量と逆の相関関係があるとしました。
彼の理論はローザンヌ学派や新古典派経済学に大きな影響を与えました。
レオン・ワルラス
ワルラスはフランス生まれの経済学者です。
1834年、フランスのエヴルーに生まれました。パリ国立高等鉱業学校に入学したものの、実学を嫌い、文学に傾倒し最終的に中退してしまいました。そんな彼ですが、経済学に数学の導入する事を提唱した人物でもあります。
彼の最大の著作は『純粋経済学要論』で、限界効用理論について展開をしています。
また、限界革命以外に、ワルラスが評価される点として一般均衡理論を提唱したことが挙げられます。
一般均衡理論とは、それぞれの商品市場において需要と供給が独立して部分的に均衡しているのではなく、各々の市場は相互依存の関係にあり、最終的にはあらゆる市場が均衡状態になると言うことです。
一般均衡理論に関しては以下の記事で詳細に解説しています。合わせて読んでみてください。
カール・メンガー
カール・メンガーは、オーストリアの経済学者です。経済学におけるオーストリア学派(限界効用学派)の祖でもあります。
彼は、1840年にオーストリアの下級貴族の裕福な家庭で生まれました。
メンガーは、古典派経済学の価格決定についての理論と実際の市場での値動きとの不一致に気づきました。1867年から経済学の研究を始め、その成果は、『国民経済学原理』 としてまとめられました。
これにより、かれは経済学のオーストリア学派の祖となりました。『経済学原理』は出版当時、ほとんど無視されたが、その後、新古典主義革命に貢献したとの名声を得た。
さいごに
最後まで読んでいただきありがとうございます。まずこの限界革命トリオは、ミクロ経済学に大きな影響を及ぼしました。参考記事もあわせてお読みください。
ここでは限界革命にまつわるオススメ書籍を紹介します。
また、経済思想について興味がある方は、50人もの経済学者について1人5分で理解きる『世界の経済学 50の名著』はオススメです。
この記事をきっかけで少し経済学について理解を深めたいと思った方は、以下の書籍から初めてみるのがおすすめです!
それは、『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編・マクロ編』です。
こちらはミクロ経済学に関して難しい数式を使うことなくわかりやすく説明してくれています。
これらの本を理解できたら、次に『スティグリッツ入門経済学』を読んでみるのもアリだと思います。ですが、正直、信じられないくらい分厚いので覚悟は必要かもしれません。
限界効用理論もミクロ経済学で触れられています。この本を読めば経済学という学問の全体像を知ることができるのでオススメです。