こんにちは。この記事では、神の見えざる手や『国富論』、『道徳感情論』有名な経済学者アダムスミスについて解説していきます。
この記事は、ビジネスマンとしてもっと教養をつけたいという人向けに書いています。
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アダムスミスとは?
アダム・スミス(Adam Smith、1723年6月5日 – 1790年7月17日)は、近代経済学の始祖とも言われている人物です。彼は、自由放任主義を主張し重商主義という当時の政府の方針に批判を加えておりました。
スミスの父はスコットランドの税関吏だったが、1723年にスミスが生まれる前に亡くなっていました。
15歳になると、彼はグラスゴー大学で道徳哲学を学び、卒業後にはオックスフォード大学に入学しました。
1751年には、グラスゴー大学に論理学の教授に就任しています。
1763年には、大学を去り、スコットランド貴族バックルー公の家庭教師になります。バックルー公の外遊にも随行し、そこ過程で様々な知識人と回りあいます。
そこで、経済への関心を示すようになり、スコットランドに帰国後10年に渡り『国富論』の執筆に専念しました。
スミスは生涯独身で、1790年に亡くなっています。
アダム・スミスの思想:重商主義への批判と資本主義への肯定
アダムスミスは、経済に対する政府の介入を非常に嫌いました。そのため彼は自由放任主義(レッセフェール)と言う立場を取りました。そんな彼の思想の背景には、
- 重商主義の支配
- 産業資本主義の進展
という時代状況がありました。
重商主義とは、政府が貿易を管理する経済体制のことを指します。民間の自由な商売を規制でがんじがらめにしてるような政策のことです。その結果、国内の産業は荒廃し国民は窮乏に晒されます。
重商主義では、国の富とは金塊であると考えられていました。そのため、金を蓄積するために輸入を減らし、輸出を振興していました。
一方で、イギリスでは産業革命が起こっていました。当時は技術の発達がめざましく、民間の活力によってイギリスは大きく経済発展をしていました。これにより産業資本主義が勃興しているような時代でした。
スミスは民間の旺盛な活力の結果、生み出される経済発展から民間の力に可能性を感じていました。一方で、重商主義という政府が市場に対して口を出す政策に対して批判的に見るようになったのです。
そして、常に人々が利己心に基づいて行動しているとしても、それ自体は問題ではなく、結果的に全体の調和が取れるとという考えを、道徳哲学教授の時代から持っていました。
この考えが、次に説明する『道徳感情論』と『国富論(諸国民の富)』にまとめられたのです。
アダムスミスの道徳哲学:人々の利己心を肯定した『道徳感情論』
続いて2つ彼の著作の解説を通して彼の思想を解説しようと思います。
- 『道徳感情論』
- 『国富論』
です。そして、彼の経済学的思想が結晶となったのが『国富論』になります。そして、『道徳感情論』は彼の思想の出発点に位置付けることができるのです。
『道徳感情論』は、1759年にスミスが道徳哲学の教授をしている時に書かれた本です。
この本はの書かれた目的としては、人間がなぜここまで社会秩序を築き上げることができたのか、その理由を解明するために書かれました。
そして、その理由とは共感(sympathy)であるとスミスは論じています。
人間とは、他人の気持ちと行動に対して「共感」しようとする生き物です。そして、他人の気持ちを自分の気持ちと照らし合わせます。
その結果、他人の行動や気持ちが第三者から「賞賛」されるものか「非難」されるものなのかを(是認と否認)確認するのです。
その結果、人々は極端な意見を避けるようになり、社会に調和が生まれるのです。
この共感を繰り返していくと公平な観察者という公平な第三者の視点に立つことが可能になるのです。公平な観察者とは、利害関係がなく公平に行為の妥当性を判断してくれる人のことです。
この公平な観察者が法律や社会の規範となり、安定した社会の構造が成立するとしたのです。
共感を繰り返すことで社会秩序が構築されることを『道徳感情論』では明らかにしました。この論は、のちの『国富論』にまで反映されることになります。
スミスの経済学:自由放任主義と神の見えざる手『国富論』
続いて、1776年に著された『国富論』について触れていきます。この著作は、アダム・スミスの経済観が描かれた著作となっております。
彼は、利己心を持って人々が商売をしても、結果として経済全体に富が行き渡ると考えておりました。この思想の根底には
- 国富とは生産物
- 労働価値説
という2つの考え方を持っていました。そして、この前提は重商主義という思想に対する批判から生み出されたものでした。
労働価値説
まず、彼の経済観を抑える上で重要なのが労働価値説です。
労働価値説とは、労働力が価値の源泉であるという考え方です。一方で重商主義は金が価値として認識されており、そこに批判を加えたのです。
交換が行われるには商品の価値の基準がなければなりません。その基準となりうるのがモノに投下される労働量です。
商品の価値とは投下された労働量と等しいと考えたのです。
国富とは生産物である
重商主義を唱えた経済学者たちは、
国の富=金(ex金塊)
と捉えていました。そのため、輸出振興と輸入制限して金を蓄積することが至上命題となっていました。
しかし、スミスは富とは、労働力が投下され作り出された生産物であると考えました。多くの労働者が働き、生産物を増やすことが国の経済にとって良いことだと考えていたのです。
分業論
生産物を増やすことが、国の富に繋がることがわかりました。ではその生産物を増やすにはどうすれば良いのか?
それが、分業です。分業とは複数の人員が役割を分担して財(モノ)の生産を行うことです。ただ漫然と作業をするのではなく、「役割を分担」して作業をするのです。
スミスは、ピン工場の例を出して、分業を論じています。
私はこの種の小さな製造所を見たことがあるが,そこでは10人しか雇われておらず,そのうちの何人かは二つか三つの別々の作業をしていた。しかし,彼らはきわめて貧しく,必要な機械もいいかげんにしか備えていなかったのに,精を出して働いたときには,一日に約12ポンドのピンを自分たちで造ることができた。1ポンドで中型のピンが4000本以上ある。それだからこの10人は,自分たちで一日に4万8000本以上のピンを造ることができたわけである。したがって各人は4万8000本の10分の一を造るわけだから,一日に4800本のピンを造るものと考えられていいだろう
スミス『国富論』第5編第1章水田訳,pp.pp.23-26,
機械もろくにない小さな製造所が舞台となっています。そこでは10人の働き手です。
しかし、この程度の規模でも分業して4万8000本ものピンを作成することができるのです。
このように、特定の専門知識や技術を持った人物がそれぞれ分業して働い方が生産性が高まるのです。
結果として富である生産物を得ることもできるのです。
神の見えざる手
このように、富である生産物を増やすために、分業をすることで加速度的に富が増え、市場規模が拡大します。市場規模が拡大すれば人口も増え、労働力が増加してより多くの富を生み出すことが可能となるのです。
分業によって人口増加と生産物の増加のループが起こるのです。
ここから、富を拡大するために人々は利己的に商売をしても、大きな富が全体にもたらされることがわかると思います。これが神の見えざる手です。
しかし、これだけでは神の見えざる手の説明は不足しています。
例えば、人を騙したりしても自由に商売しても良いのでしょうか?騙すのだって自由です。
スミスは騙して商売をするような人間は市場から排除されると考えました。何故なのか?それは人間は共感をすることができる生き物だからです。
共感によって、人の気持ちにたつことで公平な観察者という境地に達することになります。
人間の共感によって生み出された社会秩序の中では、徳というものが人々の間で生まれることになるのです。
そうすることで、社会秩序は安定しますし、必然的に徳に反するような人間は市場から淘汰されることになります。
結果として自由に人々が商売をしても悪質な商売は、共感から生まれた共感によって抑止されるのです。まさにこれが神の見えざる手と言えるでしょう。
また、ピヨピーよ速報の動画が個人的にざっくり解説されていて個人的におすすめです。あわせてみてみてください。
まとめ
これまでアダムスミスについて解説してきました。彼の思想を理解する上で、やはり現在の経済学を知ることで、より理解が深まると思います。
アダムスミスの書いた本は和訳されて文庫サイズで販売されています。もし挑戦してみたい方は以下のリンクから購入ができます。
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