今回、インタビューさせていただくのは株式会社COINJINJAのCo-founder&COOの沼崎悠さん(@yu_nmzk)です。
沼崎さんはこれまで、コイン相場やtofuNFT等のWeb3プロダクトの開発を手掛けてきており、特に、その中でもtofuNFTを世界的なNFTマーケットプレイスへと成長を遂げています。そんな沼崎さんに
- これまでの人生について
- Web3との出会いは?
- 起業してからの苦労は?
- 事業を通して社会をどう変えたい?
といったことをお伺いしていきたいと思います。
沼崎悠(Yu Numasaki)
COIN JINJA COO兼共同創業者。
ベルギーのレアメタルの商社に勤務したのち、アジア圏を対象としたエンジニア特化の採用代行事業を立ち上げ。その後、同事業を譲渡し、2017年に株式会社COINJINJAを立ち上げ。創業当初にローンチしたコイン相場は100万DLされ、2021年にたちあげたNFTマーケットプレイスtofuNFTは世界トップ水準まで成長。
※本インタビューは、資本主義の奴隷と和組DAO(@wagumiDAO)Team Communityとのタイアップ実現しました。なお、当インタビューは2022/10/11に開催された公開インタビューの文字起こしです。
Web3起業家としての沼崎悠氏とプロダクトのあゆみ
沼崎さんが創業したCOINJINJAが現在に至るまでの流れを教えてください。
2017年のクリプトブームの中でCOINJINJAを立ち上げました。
社名の由来は、一番最初に作ったサービスの名前がCOINJINJAだったからです。ICOのプロジェクトを検索することができるものでした。
このサービスと同時期に、コイン相場という仮想通貨のアプリをリリースしました。有名な取引所の価格を比較してみられるアプリケーションです。
すると、コイン相場の方が数値がよくてCOINJINJAの方は運営を放棄し、コイン相場に注力するようになりました。現在、国内だと100万DLほどのサービスにはなっています。
ただ、2020年あたりからCeFi※1からDeFi※2に流れる大きな動きがあり、オンチェーンのアプリケーションが動く時代が来ました。こうした背景から、2021年ころからtofuNFTを運営するに至るようになりました。
※1 CeFi:中央集権的な金融システム。企業等の管理者が存在する金融サービス(ex Coincheck)
※2 DeFi:分散型金融。特定の仲介者や管理主体を必要とせずに金融取引を可能にする金融システム(ex Uniswap)
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現在、運営しているtofuNFTというプロダクトが世界的に注目を集めています。NFTマーケットプレイスを選択した理由を教えていただけないでしょうか?
tofuNFTを開発した背景には、CeFiからDeFiへの移行あったと言いましたが、厳密にいうと最初はDeFiのポートフォリオを開発していました。このポートフォリオにアクセスできる権利をNFTに付与して発行したんですよね。
そしたら、ポートフォリオよりNFTへの反応が良かったんです。ここから、NFTの方がいいなと思い、マーケットプレイスであるtofuNFTをリリースしました。そしたらtofuNFTの方が数字が良かったのでtofuNFTに注力しました。
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なるほど。コイン相場の時と同じく数字が良いプロダクトに集中的にリソースを割いて行っているんですね。ちなみに、tofuNFTは当初BNBチェーン上で展開していたと思うのですが、BNBチェーンを選択した理由ってありますか?
最初に、BNBチェーンを選んだ理由としては、海外ユーザーの多いBNBチェーンが最適だと考えたからです。tofuNFT自体、当初は海外ユーザー向けに展開するつもりでしたので。
ちなみに、tofuNFTはマルチチェーン対応とGameFi特化という戦略で差別化を図っていますが、こちらは元々から立てていた戦略なんですかね?
表では、ゲーム特化とマルチチェーン対応という戦略と言っていますが、結局これも数字がよかったからの一言に尽きるんですよね。
ゲームに特化しているのも、tofuNFTを運営している中でGameFi系の数字が良かったからですし、マルチチェーン対応に関しても数字が良かったから。の一言につきます。
ある程度運営を続けていたらBNBチェーン上で一番になって、他のチェーンもやってみようかとなり、PolygonやArbitrumへの対応も開始しました。それも数字も良かったのでマルチチェーン対応をしました。
そうなんですね!最初から戦略を立てているというイメージがありましたが、どちらかというと実働の中で数字がいいものを選択していった結果なんですね。
そうですね。最初から戦略を練るというより数字がいいプロダクトを残していくという感じです。最初からうちの戦略はこうですね、みたいな喋り方をしていますが(していないかも)、そんなことはないです。
常にその場その場で数字の良いものを選択していく。それだけです。だからこそ、自分の発言って毎月基本的に変わっています。
そもそも、Web3で一年後を正確に予測することは誰もできないことを考えると、この領域で戦う以上、一貫性のある発言なんてできないんですよね。
例えば1年前はOpenseaが一強でした。しかし、今だとマーケットプレイス領域のシェアは30%もない感じです。さらにその1年前はイーサリアムしかブロックチェーンは存在しないと言われていました。このように、Web3は将来の予測が非常にしにくい領域です。
そう言った時に、発言がずっと変わらないというのは逆にヤバいと思います。
海外起業家としての沼崎悠氏
現在、Web3の最先端を走る沼崎さんですが、元々から起業への意欲は高かったんですか?
学生の時から意欲があったわけじゃないです。最初の会社も三人で立ち上げたんですけど、流れで立ち上げました。
いわゆる、意識高く起業しているタイプではなく、消去法で起業せざるを得ない状況でした。
いわゆる社会不適業者というやつですね。たまたま起業していたから、社会不適合者としての粗が見えていない感じです。
ちなみに、twitter上では沼崎さんが「人格者」との声をよく聞きます。失礼ながら沼崎さんは「人格者」なんですか?
本質的には、人格者とは真逆の人間ですよ。
業界の中では私が「人格者」ではないことは自明となっています。ところが、あるイベントで「人格者」と言われたことがあって、そこからこれは面白いぞ、となってTwitter上でいじられている感じですね。
人格者とは真逆な人間なんですね….ちなみに、沼崎さんは自分自身のことをどのように認識されているんですか?
日本人らしくないなと自分のことを思います。社会人になってから、日本人と仕事をしている時間より外国人と仕事している時間の方が多いんですよね。
それゆえに、発音自体は日本人だしネイティブだけど、難しい日本語を喋ることができないんですよね。なので、英語に訳しにくい日本語はあまり喋らないですね。
そうなんですね!確かに沼崎さんが出演している他のインタビューを見ていて思ったのは、沼崎さんの日本語ってとても理解しやすいですし、説明も無駄がないなと思っていたんですよね。
ちなみに、沼崎さんはtofuNFTを海外展開したりと、海外を中心に展開することになった背景を教えてください。
日本と経済が通年で状況が変わってしまう東南アジアや中国の状況をみて、ビジネスを日本でやる意味ないと思うようになりました。海外を視野に入れないと相当機会損失だなと思いますし。
確信したのは、北京オリンピックが開催される前後の2006年とか2007年に中国に行った時です。
中国は2005、6年とかって上海にスラム街があったような時代でした。それから急激に成長しまし、大きく変わるというのを見てきました。でも日本ってそうゆうことないじゃないですか。
つまり、伸びている国が好きなんですよね。アメリカとかヨーロッパとかはあまり興味ないですね。
Web3との出会いとその魅力
ちなみに、まさに今目まぐるしく成長を遂げているWeb3との出会いと魅力を教えていただけないでしょうか?
クリプト自体は、2017年の頭くらいからそこそこ話題になっていました。普通にIT業界にいたら察知をするくらいな感じで、衝撃的な出会いがあったわけではないんですよね。
興味を持った理由としては、ICOという仕組みが非常に魅力的だったからです。
世界中から投資を集めてそれがスマートコントラクトで処理されるというのが起こった時代なんですよね。それって、マジで奇跡だと思ったんですよね。
あと、海外への送金が面倒臭い上に手数料が高いというのはずっと海外で仕事していて感じていました。それがプログラムで解決されるというのが非常に魅力的でした。
なるほど。そうゆう原体験が今沼崎さんの今の事業に繋がっているんですね!
数字が全て。プロダクトは多産多死がうちのやり方
Web3領域で事業をされていると思うのですが、プロダクト開発で気をつけたことってありますか?
プロダクトに関していうと、作ってダメだったらすぐに捨てるというのがうちのやり方です。
みんな、この領域は当たるだろうといって、プランを作って資金を調達してプロダクトを作ると思います。
しかし、重要なのはプロダクトを作ってそこから数字が伸びるかどうかと思っています。常に新しいことを始めるとき、やってる中で一番数字が伸びているところを掘っていくというのがスタイルとしてあります。
多産多死みたいなイメージですかね
そうですね。数字が伸びているところしか信じてないです。スタイル的にも他の起業家と比べて特殊だと思います。
スモールスタートで。良いプロダクトを作っていればユーザーはついてくる
起業家の方のノーマルがわかっていないのですが、一般的には資金調達をして、お金突っ込んでプロダクトを作っていくというのがノーマルなんですかね?
はい。それがスタンダードだと思いますね。
うちは、サイドプロジェクトとして始めた感じだったので。シードで1億調達した時も、すでに1000万円とか2000万円の売上がありました。
ということは、スモールスタートという感じなんですね?
そうですね。一番最初はそうでしたね
自分の先入観で、ゴリゴリ資金調達してゴリゴリプロダクト開発している感じだと思っていました。
うちのやり方だと、最初に資金調達することはないですね。
プロダクトを出して数字が出るところまでやってみて、数字が伸び出したらお金がついてくるので。
ただ、領域によると思っていて、うちがやっているのはユーザー向けのプロダクトなので。もっと階層の低いブロックチェーンなどのプロダクトだとまた話は違うと思います。パッと作ってすぐに数字が伸びることはないと思います。
ただ、ユーザー向けに開発している場合は資金調達せずに運営をすることは可能だと思います。あまり表ではいってないですが、ちゃんとユーザー向けにプロダクトを開発していればマネタイズするのはそこまで難しくないはずなので、そんなに資金調達は必要ないと思います。
コミュニティーは幻想。プロダクトが全て。
ちなみにマーケティング面で質問なのですが、今までの話を聞いていると広告宣伝投資をガンガンするというより、ローンチしてオーガニックで反応を見るという感じですかね?
そもそも、Web3領域では広告はあまり使えないんですよね。打つところがないんですよね。
普通のアプリだと、まずユーザーが使ってくれるか確かめて、収益性があるか確認して、広告を突っ込んでユーザーを増やすというのが定石です。
ただ、Web3系は広告を突っ込んでもグロースさせることができない。理由として、twitterやFacebookなどのメディアで、クリプト系の広告は出せないことが挙げられます。日本だと暗号資産交換業の資格がないと広告が出せないんですよね。
なので、基本的には口コミとかバズるという手段、アプリ間でのユーザーの流入等のグロースハック的な方法を使わないと伸びないですね。
ということは、Web3系のプロダクトはユーザーニーズにマッチしないと基本的には伸びにくい性質があるということですね。
そうですね。
となると残されている口コミ以外のマーケティングの手段としてコミュニティーマーケティングがありますが、こちらは有効だったりするんですかね?
もちろんコミュニティーは重要ですが、有効とは言いにくいです。マーケティングの手段としてコミュニティーをやるのはかなり難しい手段だと思います。
そもそもコミュニティーと一般的に言われているのが、割と幻想だと思っています。みんなdiscordに人が集まったら、それはコミュニティーなのかというとそうではないと思います。
そもそも、コミュニティー内は多種多様です。エアドロ目的に入ってくるユーザーもいますし、プロダクトが好きで入ってくるユーザーもいます。ただ、彼らが一年後本当に継続してくれているかというとそれはまた別の話ですよね。
プロダクトに貢献してくれるコミュニティーを作ること自体難易度高いですし、他の事例を見ていても、コミュニティーで成功している事例はあまりないです。
結局、プロダクトありきで運営していくのが効率が良いと思いますね。コミュニティーベースで行く選択肢はあるとは思いますが、コミュニティーの充実がプロダクトの数字に比例するとは限らないのは注意すべきですね。
Web3の領域には「従業員」という概念がない
ちなみにプロダクトの開発自体は、何人くらいでやるんですかね?
最初は6、7人でやっていました。仲が良かった人と運営していました。COINJINJA自体は、友人の中国人のエンジニアとその周りの人から始まりました。
従業員自体は何人くらいいるんですか?
Web3の領域では従業員という概念がないんですよね。
そうでしたね。以前、沼崎さんがTwitterでWeb3領域では従業員の境界線が曖昧という話はされていましたね。
そうですね。曖昧ですし、正確に誰が働いていて、どれくらいワークしているかというのは把握していないですね。担当しているMGRに聞いて集約してけば知ることはできるかもしれないです。
ワークさせるチームの作り方のコツとかってあったりするんですかね?
んー難しいですね…最初の段階と成長段階で違うとおもうんですけど、MGRになれる人が何人いるかによって変わっていくと思いますね。MGRの人数によってチームの大きさは変わってきますね。
沼崎悠氏の社会観と哲学
現在、沼崎さんはWeb3事業を通して、どう社会を変えたいのか等の思想をお伺いできたらとおもうのですがいかがでしょうか?
ん〜。特に思想というのはなくて。
結局、誰がやっても社会が変わっていくのは決まりきった答えだと思っています。僕らがやってるのは余計な回り道をしないとか、我々の貢献している範囲はこの程度、と割り切って事業をしています。
そうなんですね。「社会が変わっていくのは決まりきった答え」。非常に興味深いと思いました。では、沼崎さんの社会観みたいなものを教えてもらえないでしょうか?
長いスパンでみていくと、人類は合理的な選択肢を選んでいくとおもうんですよね。
例えば、スマホ決済も10年前からするとあり得ませんでしたが、スマホ決済が便利だとそっちに人は流れるじゃないですか。だから、今更財布を持ちたくない。
結局、人類は便利な方に流れていくというのが原理としてあると思います。
ただ、その流れを作るのは簡単ではないです。PayPayとかLINEPayがキャッシュレス決済文化を日本に持ち込めたのも、資金力を含め勢いがあったからこそだと思います。
とはいえ、もしPayPayやLINEPayがなくても、誰かがいつか必然的にやっていたとおもいます。
なるほど。さらに深掘りしたいのですが、その沼崎さんの認識される社会の中で、沼崎さんはどうたち振る舞うべきだと思いますか?
回り道せずに効率的にこういった流れを作るというのが我々の役目です。
必然的に便利に社会は合理的な方向に進んでいくという前提のもと、自分達が便利なプロダクトを作っていくそれだけです。
例えば、紙でできるものは全部ブロックチェーンに入れられると考えているのですが、それをいかに効率的にできるかということが重要なのです。例えば不動産の証書は確実にチェーンに入れることができると思います。
確かに、世界中に不動産証書をブロックチェーンに載せた人はすごいですが、これは必然的にくる未来なので、それをやった人が社会を変えたとも言えますが、それは、未来を正しく効率的に表現できた、ただそれだけのことなのだと思います。
数字が伸びない状況は、サウナにブッ込まれている状況と同じ
これまでの話を聞いていて、とてもドライに、数字にシビアにやっている印象がありますね。
数字が伸びている時しか安心して過ごせないんですよね。
逆に数字に伸びていない時の沼崎さんはどんな感じなんですかね?
数字が伸びていない時はイライラしている時ですね。数字が伸びていない時はサウナに入っている状況で、数字が伸びている時はサウナから出ているような感じですね。
編集後記
今回は、tofuNFTやコイン相場など、国内外で非常に高い評価を受けているCOINJINJAのCOO沼崎悠さんのインタビューを実施しました。
Web3領域には珍しく、スモールスタートから始め、数字が伸びるものに注力するという徹底的なまでに合理的な経営スタイルには美しさを感じるものがあります。
さらに、沼崎さんの考え方や行動自体が非常にWeb3的であることを感じざるを得ません。
また、このインタビューは和組DAOのメンバー、特に和組DAO Adminの新井モノさん(@araimonokaiy)、経営コンサルタントの村田さん(@muarata_c2)、Braver Co., Ltd.のCEOであるHayatoさんの協力のもと実現しました。感謝申し上げます。
また、和組DAOは、VCやスタートアップ起業家からWeb3初心者まで幅広いメンバーが所属するDAO(自律分散型組織)です。以下のリンクからDiscordを覗いてみてはいかがでしょうか?