このブログを見るような人ですので、失業中の暇人ですかね?それとも、失業中ですらない無職のかたでしょうか?(のちに説明しますが、働く意欲のない人は失業中にすらカウントされません。)
今回は、失業について説明します。日常ではありふれた言葉ですが、経済学における失業の意味は、若干複雑なものになります。しかし、そうすることで、経済のニュースの理解が深まることは間違いないです。
失業とは?
ここでは経済学における失業とは何か?について解説します。
労働力の算出方法
失業とは何でしょうか?これを知る前に、労働力について知る必要性があります。成人の人口を以下の3つに分類します。
- 雇用者
- 失業者
- 非労働力
そして、労働力は、この中の雇用者と失業者の合計になります。雇用者はもちろん現在職業に就いている人のことです。それに対して失業者は、職はないが次の職を探している状態の人のことです。
ここで気をつけるべきなのが、職を探していなく就業の意思がない場合は失業者ではないということです。こうした人は非労働力になります。例えば、学生や主婦、もしくはニートのような人が含まれ、労働力には計算されません。
また、労働力の計算式は以下のようになります。
労働力=雇用者数+失業者
失業率の算出方法
失業率は、労働力人口のなかで失業者が占める割合のことです。計算式は以下のようになります。もちろん先に書いたように、ここでの労働力も雇用者と失業者の合計となります。
失業率=失業者数/労働力人口×100
=失業者数/(雇用数+失業者数)×100
失業がおこる要因
ここまで、失業率を説明してきたが、失業率は大きく二つの種類に分けることができます。
- 循環的失業率
- 自然失業率
です。
自然失業率は、どうしても発生してしまう失業率のことです。一方で、循環的失業率は、景気の動向などに左右される失業率のことです。
失業率はこの二つから構成されています。
以下で、二つについて詳しく説明をしていきます。
循環的失業率
循環的失業率とは、景気などの経済動向に左右されることで生まれる失業のことをさします。別の名前を需要不足失業と言います。
これは、労働市場で労働力の需要が減少することで引き起こされます。労働力の需要がなくなるというのは、企業が人を雇いたがらない状態のことです。
循環的失業率は、マクロ経済学が解決したい重要な項目になっています。そのため、政府の経済政策においても、重要な指標となっています。
自然失業率
自然失業率は、経済でどうしても発生する失業者の割合のことです。自分が望む条件に合う職を探していること(摩擦的失業)や、そもそも働く気がないといった事情で失業している人は、 自然失業率にカウントされます。そのため、こうした失業は、経済が潜在的産出量に達しているときでも生まれてしまうのです。
そのため、政府の政策によってコントロールすることが難しくなっています。
こうした自然失業率の中で、構造的失業、摩擦的失業、季節的失業といったものが挙げられます。
失業の種類 | 意味 |
---|---|
需要不足失業(循環的失業) | 景気の悪化による労働力需要の減少で生じる |
構造的失業 | 経済の構造的要因によって生み出される失業 |
摩擦的失業 | 転職や就職期間に時間を要するために生じる失業 |
季節的失業 | 季節的な要因で生まれる失業 |
季節的失業
季節的失業とは、季節的な要因で生まれる失業のことです。例えば、クリスマスの時期には全国的にアパートや商店街での販売員が大量にされたりします。そのほか、夏季には旅行客が増加するので観光業における雇用は増えるでしょう。
このような季節的な要因で生まれる雇用は、そのシーズンが終われば減少します。こうした時に生まれる失業は予測可能なため、失業率を算出する場合、季節調整をすることがよくあります。
摩擦的失業
摩擦的失業とは、ある職業から別の職業に移動するまでの間に失業している状況のことを指します。例えば、大学卒業後に就職浪人をしているような状態は摩擦的失業の代表的な例です。もしくはキャリアアップのために退職して、仕事を探しているような人もこれに該当します。
摩擦的失業は常に存在しています。こうした失業は、概ね三ヶ月程度の短期間で済むことが多いようです。
構造的失業
続いて構造的失業です。この種の失業は経済の構造的要因によって生み出される失業です。そのため、長期間に渡って失業状態が続く場合があります。
例えば、コロナの影響によって観光業の雇用が減少しているのに対して、プログラマーの雇用が減少しているというような状態があげられます。
なぜ、こうした状況が起きるのか?その要因として実質賃金の硬直性があります。これは、企業が賃金あまり下げない状況のことです。そのため、労働需要が景気が良くても賃金を下げないので労働需要が増加しにくくなってしまうのです。
下のグラフは、とある産業の労働需要曲線です。縦軸は賃金(W/P)です。横軸が雇用量になります。賃金が下がりにくいため、求職者を全て受け入れる賃金レベルまで下がっていないことがわかると思います。
産出量ギャップと自然失業率
ここではGDPと失業率の関係性について考えてみます。
完全雇用
実質GDPと潜在GDPが一致した時、完全雇用という状態になります。実質GDPとは、現実の経済の生産価値のことをさします。潜在GDPとは、資源がフル活用された時に生み出されるはずの生産価値になります。また、これらの差のことを産出量ギャップと言います。
言いかえると、産出量ギャップがなくなった時に、完全雇用という状況になります。
※GDPに関して詳しくは、こちらへどうぞ。
完全雇用においては、失業率が自然失業率と等しくなります。完全雇用の状態は。循環失業率が0になるということで、失業率は0にならないのです。なぜなら、先にも述べたように、自然失業率は経済ではどうしても発生してしまう失業だからです。
生産量と失業率の関係
では生産量と失業率の関係はどうなるのでしょうか?これは、オークンの法則と呼ばれる法則で示されます。経済が不況から回復する時は雇用の増加よりも産出量の増加が大きくなり、不況に向かうときは産出量の減少が雇用量の減少より大きい状況のことをさします。
オークンの研究によると、雇用量が1%増加すれば産出量は3%増加して、失業率1%増加で産出量は2%から2.5%減少すると言われています
これをグラフで指し示すと以下のようになります。縦軸は失業率で横軸が産出量ギャップになります。
さいごに
最後まで読んでいただきありがとうございます!
この記事をきっかけで少し経済学について理解を深めたいと思った方は、以下の書籍から初めてみるのがおすすめです!
それは、『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編・マクロ編』です。
こちらはミクロ経済学に関して難しい数式を使うことなくわかりやすく説明してくれています。
これらの本を理解できたら、次に『スティグリッツ入門経済学』を読んでみるのもアリだと思います。ですが、正直、信じられないくらい分厚いので覚悟は必要かもしれません。
しかし、この本を読めば経済学という学問の全体像を知ることができるのでオススメです。