DAO新しい社会

DAOのあり方について〜中島聡さんインタビュー編〜

Windows95の父とも言われる日本の起業家でもありソフトウェアエンジニアである中島聡さんに、DAOのあり方や、あるべき姿についてお伺いしました。

現在のWeb3ブームの中で誤ったDAOに対する理解を、本インタビューで中島聡さんが丁寧に解きほぐしながらこれからのDAOのあり方を提示してくださいました。

※2022年10月21日にTwitterのSpace上で実施された和組 Community Team主催「Web3 起業勉強会」をもとに再構成したインタビュー記事になります。

中島 聡(Satoshi Nakajima)
日本のコンピュータ技術者、ITエンジニア、起業家、ライター。Xevo(旧UIEvolution)の創設者。アメリカ合衆国シアトル在住。学位は、工学修士(早稲田大学・1985年)、経営学修士(ワシントン大学・2009年)。
マイクロソフトでWindows 95、Windows 98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトなどを務めた。

中島聡さんのこれまでの人生

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

本日ゲストでお越しいただいた中島聡さんです。それでは、ご自身の自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

中島さん
中島さん

はい。私は、長いことエンジニアとして活動してきました。高校生の時に、ソフトウェアで結構稼ぎました。その後、NTTデータに就職するも1年で退職し、マイクロソフトの日本法人に入社します。その後、アメリカの本社の方でWindows95の開発に携わりました。

2000年以降は、連続起業家として活動をしてきました。アメリカで起業をして売却をしては、また起業をしてを繰り返していました。

とはいえ、相変わらずコードは書いていて、Webアプリをやっている時期もあればiPhoneアプリを開発していた時期もありました。

ただ、今はWeb3にガッツリハマりこんで、毎日のようにsolidityを書いているというそんな日々を送っています。

DAO(分散型自律組織)とは何か?

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

今日のお話の第1点として、現在のDAO の概況について教えていただければと思います。

昨年くらいまでは、DAOが社会を変えるかもしれないという希望が抱かれていましたが、近年では簡単に機能するモノではないと言われ始めています。こうした中で、中島さんの考えをお聞かせいただければと思います。

ちなみに和組の中では、成果を出していくのが難しいという感覚を感じることが多くなっている気がします。なおかつ、イーサリアムの創設者Vitalik自身もDAOが全てのものに向いているのかわからないとブログでもおっしゃっています。

中島さん
中島さん

そもそもDAO とは何かと、DAOを活用して何かを運営するにはどうしたらいいのかという二つの論点がごちゃ混ぜになっている思うんですよね。でもこれらは全く別の論点だと思うんですよね。

DAOとは何かって説明すると、DAOは真ん中にスマートコントラクトがあります。そもそもスマートコントラクトはお金をどう動かすかを決めるものです。

例えば、NFTを持っている人が投票して、スマートコントラクトでお金を動かすというものになります。お金を動かす部分をやっているのがスマートコントラクトがやっていてその周りに人がいるのがDAOなんですよね。それ以上のものではないんですよね

みんなで話し合いをするとか、それぞれの人が自律的に動くのかはDAOに関係ない議論なんです。

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

なるほど。

中島さん
中島さん

DAOがセンターにあって、その周りで和気藹々と合議制でやるか、お互い喧嘩して自分の利益を最大化することを目的にするかはどちらでもいいんです。

DAOはどうあるべきかという話ではなく、応用例についての話でしかないんです。ただ、スマートコントラクトがそこにあって、それによってお金の行き先が決まるんですよね。

正直、僕からすると合議制で和気藹々と決めるというのはDAOである必要がないんですよね。社長はいないけど自律的に頑張ろうという状況でDAOである必要は必ずしもないと思います。

逆にドライな方がDAOは機能するんだと思うんですよね。

ちなみにnounsはDiscordを閉じることにしたんですよね。みんな喧嘩ばかりして嫌気がさしたんですよね。意見の違う人が一つのところに集まる必要はないんですよね。意見を同じくする人同士で集まって投票をすればいいんですよね。

実際に、nounsDAOも、Disocordは一つではなくそもそも色々Discordがあります。

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

賛成意見と反対意見があると不毛に終わるという話がありましたが、議論をすることが無駄ということでしょうか?

無駄かどうかという問題ではなく、nounsDAO がそう判断したということが全てです。

大事なことが永遠と平行線をたどってしまったんですよね。意見が食い違ったままずっと同じ話をしているんですよね。

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

お互いが議論を通じて、歩み寄るということはないということがわかってきたということなんですね。

中島さん
中島さん

そうですね。結局違う意見同士が議論をしても平行線を辿るのならば、意見を同じくするもの同士で議論して組織票で投票をする方が良いのではないかということです。

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

ということは、自分の意見を通したい場合は人を集めなければならないということですね。

中島さん
中島さん

その通りだと思います。nounsDAOはDiscordが閉じたのち、各派閥ごとにDiscordができると思います。ある意見を持つ人は、自分と意見が合いそうな人を説得して仲間を増やしていくという形になると思います。

結局人間関係なんで色々ありますよ。国会とかも一緒だと思うんですよね。結局、各党派の中で意見を決めて、国会の中では何も決まっていない訳で、結局は投票で決めるということになっていますね。

DAOは株式会社を置き換える存在ではない

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

DAOが株式会社を置き換えたりしないというお話がありましたが、これは、DAOがもともと違う形式の株式会社に置き換わるというのは間違っているということでしょうか?

中島さん
中島さん

そうですね。Vitalik自身も最初は置き換わると思っていたかもしれません。社長が私腹を肥やしたりできないようにできる訳ですが、実際にやってみると機能しないことがわかってきたんですよね。

実際に開発の場合、トップダウンでないとほとんど進まないですし。私の中ではノンプロフィットでお金で集めて寄付先を投票で決めるというのが美しく機能するのではないかと思っています。

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

極論ですが、実は地方自治体などの官営機関はDAOが向いているなんてこともありうるってことですかね?

中島さん
中島さん

そうですね。全て透明化されて住民投票で決まることが必要な国とか地方自治体には向いているかもしれません。

DAEとはDAEがなぜい良いのか?

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

Decentralized Autonomous Ecosystem(DAE)でいいんじゃないか?という発言がありましたが、DAEが何を意味していて、なぜDAEがいいのかを教えてください

中島さん
中島さん

DAEのいいところを見出してくると、お金の流れを自動的に人間の手を経ず効率的に行われる点です。効率が良く、人件費がかからず、中抜きをする人がいないということがあります。

DAE(Decentralized Autonomous Ecosystem)とは?
さまざまな開発者が作った複数のスマートコントラクトが、定められたプロトコルを使ってエコシステムを作る、Decentralized Autonomous Ecosystem(DAE)。多数決のような無駄な仕組みを排除し、スマートコントラクトだけで経済圏を作ってしまう

@snakajima:11:15 AM · Sep 25, 2022
中島さん
中島さん

例えば音楽の販売を考えると、レコードレーベルがいてそこからアマゾンに下ろしてユーザーに売るので場合、数%しかアーティストに収益が行きません。

しかし、DAEにすることで中間搾取をなくすことができるんですよね。これをスマートコントラクトに置き換えて仕舞えばアーティストに90%近く渡すことができるようになる訳です。

自動化された市場になる訳ですよ。そこではソフトウェアだけ勝手に動いているだけです、それが非常に美しいなと思った訳です。いいことばかりではないですが。

DAEのスマートコントラクトを作る人はエンジニアです。音楽の流通のためにソフトウェアを開発して実装する訳です。彼らはそのソフトウェア開発して実装するので手数料をちょっと取ると思うのですが、たかだか数%です。

重要なのはマーケットが成立してそこには組織もなく、スマートコントラクト上で勝手に動くということなんです。

一回会社にお金が入ることなく直接取引が実現される訳です。これは音楽に限らず絵にもニーズが発生したならスマートコントラクトを適用する。

ある意味早い者勝ちで、マーケットプレイス同士が戦って手数料も下がってくるということですね。ユーザーインターフェースもよくなっていくという感じです。

DAOはポンジスキームなのか

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

中島さんのお話の中で近年のWeb3プロジェクトが「ポンジスキーム」になっているという指摘がありました。

この中島さんのお話を当てはめるとDAOに関しても同様のことが言えると思います。ただ、私は必ずしもポンジスキームとも言い切れないと思ってます。DAOが成長した時にトークンが爆あがりする可能性もあると思いますし、それによってトークン保有者が利益を獲得できる可能性もあります。

中島さん
中島さん

DAOのトークン発行によってお金を集めている人はみんな、爆上がりするというんですよね。でもこれは宣伝文句に過ぎないです。Web3ベンチャー側からしたら、この謳い文句を使うことで、一般の人からお金が集めやすいんですよね。

そもそも、VCからお金を集めるってすごい大変なんですよね。プレゼンにプレゼンを重ねて投資してくれるとなっても株式の30%持っていかれたり、それを2回3回を重ねると議決権を持っていかれてしまうんですよね。

それに比べたら、DAOを立ち上げてトークンを発行してお金を集めるって、いいとこ尽くしなんです。さらに、お金だけでなく、投資家側も能動的にユーザーを集めてくれるんですよね。自分のトークンの価値が上がるので。

このように、開発費も払ってくれる上に、人も集めてくれるんですよね。本当にいいところ尽くしです。しかも集まったお金は開発者達のものになります。

また、結局ベンチャー側は、バブルになったとしても資金が入ってきてメリットしかありません。トークンの価値が下がって、ユーザーも減ってその段階でガバナンストークン持っているので経営してくださいねと言ってベンチャー側は消えてしまえばいいんです。

すごく美味しいビジネスですよ。

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

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和組DAO<br>新井モノ
和組DAO
新井モノ

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中島さん
中島さん

それしかないんですよね。僕がもしWeb3のプログラミングができて全然成功できてなく、とにかくお金が欲しいならこれをやりますね。

みんな欲の皮の突っ立った奴等が買ってくれるんですから。インフルエンサーたちが拡散してくれますし。3ヶ月でもいいんですよ。一度に大きなお金が入ってきている訳ですから。ダメになったらユーザーに経営任せて、次のプロジェクトを立ち上げてしまえばいいんですから。

中島聡さんが語るDAOのあるべき姿

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

消費者保護の観点からもこういったビジネスはよくないんじゃないか?ということですかね?

中島さん
中島さん

そうですね。実際に、株式という制度が始まった直後の19世紀にも同じようなことが起こったんですよ。

投資詐欺で欲の突っ立ったやつに株を売ってお金を集めて、自分達はいい暮らしをして、で会社潰れてしまいましたと言って逃げていく奴がたくさんいたんですよ。

これに対して、消費者を守るためにアメリカもヨーロッパも株主を守るための法律を作ったんですよ。

その甲斐もあって、今の株式市場や未上場のところも含めてかなり守られているんですよね。だから、一般の人はベンチャー企業の株を買いにくくなっています。

今、暗号資産界隈でも19世紀の時と同じような事態が起こっています。こうした19世紀の状況を再来させていいのか?ということですよね。

和組DAO<br>新井モノ
和組DAO
新井モノ

こうしたことも踏まえて、規制は強めていきたいと当局は考えているということですよね。そうゆうことが繰り返される可能性は高いですよね。

中島さん
中島さん

アメリカでは、ガバナンストークンの場合でも株式と同じような規制が適用されることになっています。少なくともアメリカでは、19世紀みたいなことをしていると牢屋に入りますね。背任行為で。

そうゆう意味で、日本は背任行為で牢屋に入らないのでどうなるのか心配ですよね。

和組DAO<br>新井モノ
和組DAO
新井モノ

ガバナンストークンを発行したら株主名簿を当局に出す方向性になっていく可能性が高いという話も聞きますもんね。今はグレーでやりたい放題という感じですもんね。

これまでの話を踏まえると仕組みを作るまでは、トップダウンで開発者が開発をおこない、仕組みができたらスマートコントラクトで動いていくということになると思います。逆に中島さんにこうした方がいいというのはありますでしょうか?

中島さん
中島さん

僕が思っているのは、スマートコントラクトが仕事をしているだけで、組織が介在しない形式が良いのではと考えています。

これって今までと発想が違うのでついてこれていない人がほとんどだと思うんです。

確かに、DAOが会社組織に変わるとか考えると面白いんですが、結局消費者を守るということになるとガバナンストークンも株式と同じように規制が強まってなんの進歩もないんですよ。

実際にビットコインも組織がないじゃないですか。サトシさんがデプロイしたコードが存在するだけでそれが勝手に仕事していて、誰もガバナンスをしていない。それと同じようなことがスマートコントラクトでできるし、そうゆうのが作りたいと考えています。

和組DAO<br>新井モノ
和組DAO
新井モノ

本当の意味でのオートノマスですね、

中島さん
中島さん

人間がからむと碌なことないんですよ。本当にスマートコントラクトが動くだけとなる場合、それをデプロイした瞬間に決まるんですよね。

スマートコントラクトがなんらかの経済圏を作るので、その仕組みに十分なインセンティブがあれば他の人たちが入ってくるんですよ。このスマートコントラクトがあれば儲かるかもしれないと思えば、例えば音楽ならミュージシャンが音楽をアップロードするようになるんです。

これこそが、革命なんです。会社不在で経済圏ができてしまうんですよ。

スマートコントラクトで動いていく、自律的に動いていくんです。スマートコントラクト同士が戦うんですよね。

和組DAO<br>新井モノ
和組DAO
新井モノ

イーサリアムでは以前と、選任されたエディターが決定権を握っているようなので、まだ開発途上ですよね。まだ成長途中だから組織もあるけどいずれはということですね。

中島さん
中島さん

僕が言っていることってそんなに儲からないんですよね。ガバナンストークンを発行するP2Eゲームは素人からお金を集められるから、べらぼうに儲かるんですよ。

金集めしたいならP2Eで、本当に世の中を良くしたいならオートのマスを考えた方がいい。

ということで、消費者からするとガバナンストークン付きのP2Eゲームは避けた方がいいと思いますよ。という結論です。

和組DAO<br>村田
和組DAO
村田

ありがとうございました。

和組DAO<br>新井モノ
和組DAO
新井モノ

ありがとうございました。

編集後記

今回は、和組Team Community主催の中島聡さんインタビューを記事化しました。DAOに対する一般的な考え方に対して本質的な指摘を加えてくださった中島さん。

あくまで、スマートコントラクトでお金の行き先が決まっていくだけで、その上で展開される組織のあり方はDAOとはまた別の話であるという点には、筆者のこれまでのモヤモヤをスッキリさせました。

また、主催してくださった和組Team Communityの皆様ありがとうございました。

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