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【レビュー】『データ資本主義:21世紀ゴールドラッシュの勝者は誰か』をわかりやすく書評・要約。

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2000年以降、AI(人工知能)やビッグデータの重要性が非常に高まっています。これにより、GAFAやBATと呼ばれる企業群が台頭しています。

みなさんが日頃使っているGoogleの検索エンジンや、iPhoneのSiriなどはビッグデータとAIによって実現している最たるものでしょう。

この記事では、2018年に野口悠紀雄さんによって書かれた『データ資本主義:21世紀ゴールドラッシュの勝者は誰か』について要約・書評していきます。

この本は一言で、新しいタイプのデータであるビッグデータについて論じた書籍です。また、ビッグデータの登場によって生み出されたのがタイトルにもある「データ資本主義」であると著者は定義づけています。

ビッグデータの活用することによって、これまでできなかったさまざまな新しい活動が可能となる、こうして今新しい経済社会が誕生しつつある。

『データ資本主義:21世紀ゴールドラッシュの勝者は誰か』p4

また、みなさんの知らないうちに個人の属性などがAIによって分析もされています。これをのちにプロファイリングといいます。Facebookや、アマゾンのレコメンド、Googleの検索エンジンなどでも活用されています。

これらのサービスの背景にある、AI(人工知能)やビッグデータについての解像度を一気に上げてくれる書籍となっています。まだ読んでない方はぜひ読んでみてください。

『データ資本主義:21世紀ゴールドラッシュの勝者は誰か』目次

第一章:ビッグデータは日常と「天文学的に」違う
第二章:ビッグデータによるパタン認識
第三章:ビッグデータによるプロファイリング
第四章:理論駆動型からデータ駆動型へ
第五章:データサイエンスの役割
第六章データ資本主義とプラットフォーム企業
第七章:プラットフォーム企業の支配力にどう対抗するか
第八章:ビッグデータの将来
第九章:監視社会への道?

著者について

今回紹介する『データ資本主義』の著者は、野口悠紀雄(のぐち ゆきお)さんです。彼は経済学の研究者です。専門は日本経済論と言われる分野です。

1940年に東京に生まれ、 1963年に東京大学工学部卒業しています。 彼は、大蔵省に勤務したのち、エール大学で経済学博士号を取得している人物です。

その後、 一橋大学、東京大学、スタンフォード大学、早稲田大学大学院ファイナンス研究科で教鞭をとったのち、現在は一橋大学名誉教授をつとめています。

彼についてもう少し詳しく知りたい方は以下のサイトも参考に見てみてください。

要約

この本は、ビッグデータについて書かれた本です。本書では

  • ビッグデータは従来のデータとどう違うのか?
  • 科学的な方法論がどのように変化したのか?
  • データサイエンスとは何か?
  • 企業はデータサイエンスやビッグデータをどのように活用するのか?
  • ビッグデータによって変わった社会はどのようなものなのか?
  • ビッグデータは将来どこへ向かうのか

といったことを、この本では解明しています。データ資本主義についての概略を述べた著作であるといってよいでしょう。

ビッグデータとは?

ビッグデータとは、その名の通り巨大なデータという意味です。具体例としては、検索履歴、SNSのいいね、マップの行動履歴、顧客の購買履歴などがビッグデータとして活用されています。

ビッグデータは、サービスの提供者、例えばGoogleやFacebookなどのサービス提供者によってに利用されます。さらに、スマートフォンの登場によりビッグデータは増大しました。

では、ビッグデータと既存のデータと何が違うのでしょうか?それは、データの量と著者は述べています。

ビッグデータは、通常のデータとは天文学的にデータ量が違うのです。我々が普段使う、テキストファイルではKB単位、ハードディスクはHDと言われています。

一方のビッグデータを活用しているGoogleはZBとも言われています。これは大体10億倍ほどの量になります。画像や写真のような非構造化データもビッグデータには含まれています。cf 構造化データ:ExcelファイルやCSVファイルを構造化データ

また、個々のデータ自体には価値はなく、大量のデータが蓄積することで経済的な価値が出てくるという点もビッグデータの特徴です。

このビッグデータは、のちに解説するAI(人工知能)によって分析されることでビジネスに利用することができます。それに成功したのがGoogleやFacebookです。SNSや検索エンジンを提供することで、検索履歴や投稿内容が蓄積されビッグデータが形成されるのです。

CHECK
  • ビッグデータは、通常のデータとは天文学的にデータ量が違う
  • 大量のデータが蓄積することで経済的な価値が出てくるとい

AIとビッグデータ

ビッグデータはAI(人工知能)と組み合わさることで意味をなしてきます。

AI(人工知能)がこれまでのコンピューターとは違う点としてはパタン認識ができる点があげられます。パタン認識とはコンピューターが図形や自然言語を認識し理解することです。例えば、りんごがあればりんごと認識することいったことが挙げられます。

従来のコンピューターではパタン認識ができませんでした。しかし、ディープラーニング(機械学習)によってパターン認識が可能になったのです。ディープラーニング(機械学習)とは、人間の神経細胞(ニューロン)と似た動きをする仕組みをコンピューターの中に作り、そこにデータをAIに学ばせるのです。

AppleのSiriやGoogleの音声認識などが、こうしたAIとビッグデータを利用することで実現しているサービスです。画像認識では、現在では人間と遜色ないくらいなっているそうです。

しかし、このAI(人工知能)がパタン認識をする過程は常にブラックボックスになっています。例えば、対象をりんごと認識した際に、なぜそれをりんごと認識したのかが人間には理解ができないのです。

このブラックボックスなゆえに、人間に対してAIは不気味な印象を与えることになっています。

AIの技術は、音声認識や画像認識にとどまらず、Maasや自動運転、農業や製造業、医療などの分野でも応用され革新を起こそうとしています。

CHECK
  • ビッグデータはAI(人工知能)と組み合わさることで意味をなして来ます。
  • ディープラーニング(機械学習)によってパターン認識が可能になった
  • AI(人工知能)がこれまでのコンピューターとは違う点としてはパタン認識ができる点

平均値からの脱出:プロファイリング

AIはビッグデータを用いることでプロファイリングを行うこともできます。プロファイリングとはコンピューターが個人の属性を推測することを指します。

Facebook、Googleなどは、検索履歴やSNSの発信内容、ブログを通じてビッグデータを蓄積しそれを分析することで、消費者の属性や行動を予測しています。

これにより、従来とは違って非常に精緻なマーケティングが可能になっています。なぜなら、プロファイリングによって個人の行動の予測ができるようになったからです。

従来は均質なマス市場を想定し、その中から消費者を少数抽出して分析するという手法が主流でした。しかし1人1人のニーズに合ったマーケティング活動が可能になるのです。

Googleであれば、ビッグデータの分析から得られたデータから、各人に合ったターゲティング広告や検索結果を出すことを可能にしています。以下に貼られた広告がまさにターゲティング広告です。

例えば、Facebookはいいねの分析からさまざまなことを分析してビジネスに役立てています。人々の属性をかなり正確に把握できるレベルに達しているのです。本書では、非常に面白い事例を紹介しているので、ぜひ読んでみてください。

CHECK
  • AIはビッグデータを用いることでプロファイリング、個人を分析ができるようなった
  • 1人1人のニーズに合ったマーケティング活動が可能になるのです。

理論駆動型からデータ駆動型へ

こうした、ビッグデータやAI(人工知能)によって、科学の方法論や経営の手法において大きな転換が起こったとされています。

それが理論駆動型科学からデータ駆動型への転換です。

従来の理論駆動型は、現実を抽象化し単純化した世界を想定しそこでの法則を理論化するような思考法です。つまり、人間側の頭の中でモデルを想定し、そのモデルをもとに検証を行うような考え方です。この本で、仮説検証型とも言い換えられていました。

一方のデータ駆動型は、ビッグデータやAIの登場によって生み出された考え方です。これは、まずデータを見て、それが適用できる法則を探すという考え方です。これは、仮説の質ではなくデータの量で押し切るという考え方になります。

この考え方を最初に使用したのがヒトゲノムの分析でした。データ駆動型のメリットとして状況変化に対応しやすいという点があります。

データ駆動型は、科学にとどまらず経営の意思判断にも影響を与えるようになっていきました。特に、経営者は、これまで直感によって意思決定を行っていました。しかし、データ経営をする際には、データの生み出す事実に即して意思決定をしなければ、データ経営は成立しないのです。

CHECK

ビッグデータやAI(人工知能)によって、科学の方法論や経営の手法において理論駆動型からデータ駆動型へ転換を遂げ始めた

データサイエンス重要性の高まり

こうした中で、データサイエンスの役割が高まっています。なぜか?

それは、AIに機械学習させる際に、ただたんにビッグデータを流し込めば良いというものではないからです。データをAIに流し込むだけだと、「過学習」という不必要な情報を学習してしまうリスクがあります。

その上で、データサイエンティストによってデータを加工してから機械学習させなければならないのです。こうしたなかで、データサイエンスの重要性は日ごとに高まっています。

もしデータ経営をするならばデータサイエンティストが必要になってきます。そのままデータを流し込むだけではビッグデータを活用し切ることができません。また経営者がそのデータによって生み出されたものを意思決定に反映させないと意味がないのです。

CHECK
  • ビッグデータとAIの登場によりデータサイエンスの重要性が高まっている
  • データサイエンティストによってデータを加工してから機械学習をさせる必要性
  • データをAIに流し込むだけだと、「過学習」という不必要な情報を学習してしまうリスクがあ

データ資本主義とプラットフォーム企業 

これまでのAIやビッグデータの重要性の向上から、データというものが経済学でいう資本となりはじめています。特に、GAFAやBATなどの企業は無料で集めたデータを価値ある資本に転換することに成功しています。

既存の情報産業(テレビや映画)のように情報を伝達することがメインでした。しかし、GAFAなどのプラットフォーム企業は、情報自体から経済的価値を引き出しているのです。

さらに、彼らは対価なしでビッグデータを集めることにも成功しています。Googleはカレンダーやマップ、メールなどを無料で提供しています。人々はこれらのツールを喜んで受け入れます。その利用を通じて人々はGoogleに情報を提供してきました。

結果として、人々はそれなしでは生活や仕事ができないようになっています。

これによりプラットフォーム企業の利益率は他産業と比べ高いとも言われています。このことから、データを制するものが世界を制すると言いうることができるのです。

しかし、ビッグデータの利用に関して、プライバシーの観点から規制されるという事態も起こっています。例えば、一般データ保護規則(GDPR)ではプロファイリングされない権利などを定めており、個人データの利用に対する社会的な制約が高まっています。

EU 一般データ保護規則(GDPR)について | EU - 欧州 - 国・地域別に見る - ジェトロ

こうした点から、必ずしもプラットフォーム企業がビッグデータを集められるかどうかはわからないのです。かありにデータを制するものがAIを制するとしてもそれが誰かはわからないというのが現状であると著者は述べています。

CHECK
  • データというものが経済学でいう資本となりはじめている。
  • 対価なしでビッグデータを集めることにも成功
  • ビッグデータの利用に関して、プライバシーの観点から規制されるという事態も起こって

ビッグデータのこれから

著者は、ビッグデータが将来的にどのように利用されていくのについて言及しています。特に、

  • データの有償取引
  • マネー取引のデータ化
  • Iot分野のデータ

について言及しています。

近年のデータ自体を有償取引をする流れがあります。中国でもデータ取引所が開始され、さらに日本でも同様の試みがなされていそうです。例えば博報堂や三菱UFJ信託銀行などはデータ有償取引に積極的に動き出しているそうです。

しかし、データの有償取引に対しては著者は、

・本当に意味のあるビッグデータが集まるのか?
・正しいデータが集められるのか?
・プライバシーへの配慮が必要だ
・データの値付けはどうするのか?

などと懸念点を述べています。

2つ目は、マネー領域のビッグデータとして重要性が高まることが挙ています

近年までは、マネーに対するビッグデータとしての重要性が気づかれていませんでした。しかし、GAFAの台頭などをへて重要視されてはじめているのです。

例えば、キャッシュレスサービスの隆盛も背景にはビッグデータを集めたいという目的があるのではないかと著者は述べています。

なぜなら、決済サービスでは、消費者がどこで何をいつ買ったかという購買データが入手できるというメリットがあるからです。

実際に中国では決済サービスによるビッグデータの活用が実現しています。芝麻信用社の電子マネーの情報が、国家ぐるみで信用スコアリングに利用されているのです。

芝麻信用の信用スコアの利用データとスコアリングの仕組み - dataway

この点においても著者はプライバシーの観点から懸念を示しています。中国では信用スコアが低い人間が交通機関を利用でいない、データを警察へ提供しているといった問題が発生しています。

著者は、こうした流れは監視社会を招きかねないと警戒しています。実際に中国の全体主義的な国では監視社会的な流れがビッグデータの活用によって起こっています。しかし、民主主義国家でも中国のような事態が起こらないとは断言できないのです。

CHECK
  • データの有償取引や決済システムによるデータの収集が今後、盛んに行われる
  • 監視社会を招きかねないと警戒する必要がある

書評

まず一点、この本の出版は2018年であり2021年段階では古い事例が多くみられたという点があった。その上で、ビッグデータやAIによって変遷する資本主義のありようの本質的描き出した点で非常に興味深い書籍だった。

特に、データが資本となるという点が、データ資本主義において最も本質的な部分だと思われた。以下の図のように、商品を生産する上で生産要素が必要なのは今も昔も変わらない。

産業革命時であれば、鉄道会社の資本は鉄道や線路のような物質的なものであった。そして、乗客に対して移動という便益を与えることで利潤を得てきた。

しかし、現在のGAFA、特にGoogle、Facebookは、ビジネスモデル的に広告主が顧客になる。広告主に対して、効率的な広告を提供し効率的なマーケティングを実現する。

ここで私が思うのは、消費者は顧客ではないという点だ。あくまでデータを構成する素材にすぎない。ここに、従来のメディア産業とは違う点があるだろう。

つまり、我々消費者は資本の一部となってしまったという視点が必要なのではないかと考えた。ここにマルクスの言う人間疎外が起こっているように思える。しかし、我々消費者は無料という麻薬によって人間疎外から逃れられない状態に陥っている。

こうした点が、著者が随所で懸念を示していたプライバシーの問題や監視社会の問題の根底にあるように思われる。しかし、皮肉なことに情報をプライバシー無視で集めている中国の方が国家的に強くなっていく。

こうした、諸刃のつるぎとも言えるビッグデータの恩恵について非常に考えさせられる著作であったと自分は考える。

まとめ

いかがでしたでしょうか?GAFAは現在世界に大きな影響力を与えています。まだ読んでいない方はあらためて読んでみるのも良いでしょう。

さらに、GAFAには本書以外でもさまざまな書籍が出版されています。本書でも紹介している『GAFA:the four:四騎士が創り変えた世界』は特に、経済学者が書いており興味深い内容となっています、併せて読んでみるのも良いでしょう。


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