マクロ経済学経済学

【イラスト図解】国際マクロ経済学とは?わかりやすく解説。| かんたんなマクロ経済学

国際マクロ経済学では、海外部門を含めて経済の動向を分析します。

日頃、ニュースで目にする円高や円安、国際収支といった言葉は国際マクロ経済学を学ぶことで深く理解することができます。

この記事では、国際マクロ経済学の解説を通して、

  • 円高
  • 円安
  • 国際収支

といった概念について解説していきます。

この記事で得られること
  • 国際マクロ経済学の概要がつかめる
  • 国際収支、経常収支、資本収支の意味が理解できる

まだ通常のマクロ経済学を理解していない方は以下の記事も合わせてお読みください。

国際マクロ経済学とは?

国際マクロ経済学とは、海外との経済関係を分析の対象としてマクロ経済の理論を応用して経済を分析する経済学の一分野のことです。ここではマクロ経済の全体像を見てみましょう。

海外との関係を考慮したマクロ経済には

  • 国際収支
  • 為替レート

と言う要素が付け加わります。

国と国はカネやモノを取引します。その際に儲かったり(黒字)、逆に儲からなかったり(赤字)します。これを国際収支と言います(後ほど詳しく解説します)。

一方で、海外と取引をする際には相手国の通貨と自国の通貨という複数の通貨基準を考える必要があります。この時、相手国と自国の通貨の交換比率を為替レートと言います。

為替レートによっては、前より安く他国の商品を変えたり、もしくは逆のパターンがあります。またこの為替レートを支えているのが為替相場という制度になります。

為替レートと国際収支はお互い相互に影響を与え合う関係にあり、これらの関係は国内のマクロ経済にも影響を与えます。

以下では、国際収支と為替レートについて解説したのちに、マクロ経済との関係性を見ていきます。

CHECK
  • 国際収支その国の儲かったり(黒字)、逆に儲からなかったりする(赤字)部分
  • 為替レート相手国と自国の通貨の交換比率

国際収支とは?:

国際マクロ経済学では、海外との経済的なやりとりを考慮に入れてモデルをつくっていきます。

海外との経済的なやりとりは、国際収支として集計します。

国際収支

一定期間内の一国全体の対外的な経済取引をまとめたものを国際収支(BP:balance of payments)といいます。この国際収支は2つにわけることができます。それが

  • 経常収支(current balance)
  • 資本収支(balance of capital account)

財やモノの取引によって生まれるモノが経常収支(current balance)です。資産や負債などのカネそのものやりとりが資本収支(balance of capital account)です。

この経常収支と資本収支の2つを合計したものが国際収支になります。

国際収支 = 経常収支 + 資本収支

国際収支の均衡

この2つの収支は、まずは望ましい状況として国際収支が均衡している状態を考えます。実際には黒字になったり、赤字になったりします。

国際収支の均衡は経常収支と資本収支の合計が、プラス・マイナス・ゼロの状態を示します

経常収支+資本収支=0

CHECK

経常収支(current balance)財やモノの取引によって生まれるモノが
・資本収支(balance of capital account):資産や負債などのカネそのものやりとりが
・経常収支と資本収支の2つを合計したものが国際収支
・経常収支と資本収支がプラマイゼロの時に国際収支は均衡する

為替レートの決定

続いて、為替レートについて解説します。

為替レートの上昇と下降:円安と円高

ある国と相手国の貨幣の交換比率を、為替レート(exchange rate:為替相場)といいます。

為替レートは

  • 1ドル=○円
  • 1元=○円

とあらわされます。これを自国通貨建て為替レートといいます。では為替レートとは何か?日本円とアメリカドルを例に見てみましょう。

1ドル=80円が1ドル=100円となった場合は円安になります。アメリカの1ドルで80円のものしか買えませんでした。しかし、1ドルで100円の日本の商品を変えるようになります。

円安とは円の価値がドルに比べて下がっていることを指します。この価値が下がっていることを円安(減価)と言います。

これらの現象をまとめて為替レートが上昇すると言います。

1ドル=100円が1ドル=80円となった場合は円高になります。1ドルで100円のものを買えたのに、1ドル=80円になることで、80円のものしか買えなくなります。

円高とは、円の価値がドルに比べて上がったことを指します。価値が上がることを円高(増価)といいます。

この現象をまとめて為替レートが下降したと表現されます。

CHECK

円安とは円の価値がドルに比べて下がっていること
・円高とは、円の価値がドルに比べて上がったこと

輸出と輸入の関係

為替レートは貿易に影響を与えます。円安の場合、日本が輸出するときにに有利です。一方で、円高の場合、日本が輸入する場合に不利になります。

円安は相手国は日本の品物をより安く買えます。日本の輸出は増え、逆に輸入は減少します。

これにより、日本に入ってくるお金が増えるので経常収支は改善します。

円高は、日本が輸入に有利で輸出の場合には不利になります。

円高は日本にとっては、自国通貨で相手国の商品を安く買うことができます。結果、日本の輸入は増加し、逆に輸出は減少します

結果として、日本からお金が出て行くので経常収支は悪化します。

CHECK
  • 円安の時には経常収支は改善
  • 円高の時には経常収支は悪化

為替相場

この為替レートを支える制度のことを為替相場と言います。この為替相場の制度には、

  • 固定相場
  • 変動相場

があります。これらは、政府の財政政策や金融政策に対して影響を与えます。詳細は後ほど解説します。

また変動為替相場制の歴史については以下の記事で解説しているので参考までにご覧ください。

IS-LM-BPモデルについて


IS-LM-BP分析とは、IS-LM分析に国際収支の影響を考慮したものになります。

IS-LM分析は別の記事で詳細に解説しているので合わせてお読みください。

IS-LM-BPモデル(マンデル=フレミング・モデル)とは?

BP曲線(国際収支均衡線)をIS-LM曲線に付け加えたものをIS-LM-BPモデル(マンデル=フレミング・モデル)といいます。

このモデルの目的としては、国内で行われた財政政策や金融政策が国際収支にどのような影響を与えたのかを分析することができます。また、横軸は国民所得(Y)で縦軸は利子率(r)になっております。

では、そもそもBP曲線とはなんでしょうか?以下で詳細に解説します。

BP曲線(国際収支均衡線)の3つの仮定

BP曲線(国際収支均衡線)とは、国際収支が均衡している国民所得(Y)と利子率(r)の組合せを曲線で表したものになります。このモデルには3つの仮定が存在します。それが

  • 仮定①:経常収支と為替レートは比例関係(増加関数)
  • 仮定②:経常収支は国民所得は反比例の関係(減少関数)
  • 仮定③:資本収支は自国と相手国の利子率の差は比例関係(増加関数)

です。

仮定①:経常収支と為替レート

モノのやりとりを示す経常収支は、自国通貨建て為替レート(e)の増加関数と仮定します。

為替レート(e)の上昇とは、自国通貨の減価、つまり円安のことです。円安では輸出が増加するので経済収支が改善されます。そのため経常収支は増加関数で表されます。

仮定②:経常収支と国民所得

経常収支は、国民所得(Y)の減少関数と仮定されます。

国民所得(Y)が増加した場合、海外からの輸入が増加します。輸入が増加することによって経常収支が悪化します。そのため、経常収支は国民所得(Y)の減少関数とみなされます。

仮定③:資本収支は利子率の差

資本収支は、自国利子率(r)と外国利子率(r*)の差の増加関数と仮定します。つまり、

(r – r*)の増加関数と考えることができます。

なぜなら自国の利子率が外国の利子率より高くなった場合、海外の投資家たちは利子率の高い自国にカネを出すようになります。これを資本流入と言います。

これにより資本収支は改善されます。自国利子率(r)と外国利子率(r*)の差が増加すればするほど資本収支は改善されるので増加関数として表すことができます。

CHECK

BP曲線の3つの仮定

  • 仮定①:経常収支と為替レートは比例関係(増加関数)
  • 仮定②:経常収支は国民所得は反比例の関係(減少関数)
  • 仮定③:資本収支は自国と相手国の利子率の差は比例関係(増加関数)

BP曲線は右上がりの形状になる

この3つの仮定を考慮するとBP曲線は右上がりになります。詳しく解説します。

まず仮定②について考えます。国民所得(Y)が増加すると、輸入が増加します。この場合は経常収支は悪化します。

そこで国際収支が均衡するときにはBP=0となる必要があるので、経常収支が悪化した分、資本収支を改善する必要性があります。ここで仮定③の出番です

海外から資本が流入する必要性があるので利子率(r)をあげる必要性があるのです。

国民所得(Y)増加→経常収支の悪化→利子率(r)の上昇→資本収支の改善→国際収支の均衡

という流れになります。ここから国民所得(Y)増加すると利子率(r)が上昇するので、BP曲線は右上がりになるのです。

また、BP曲線上では国際収支は均衡しています。BP曲線の右側の領域では国際収支は赤字になります。左側の領域は国際収支が黒字になります。

為替レート(e)が上昇した場合、BP曲線は右シフトして逆の場合は左へシフトします。為替レートが上昇すれば

CHECK

BP曲線は右上がり

BP曲線の傾き:資本の移動の自由度を示す

BP曲線の傾きは、資本移動の自由度を示します。

資本移動の自由度が高い(伸縮的)ほどBP曲線の傾きは小さくなります。一方で、自由度が低くなる(硬直的)ほど傾きは大きくなります。

資本移動が完全に自由の場合には、BP曲線は水平になります。一方で、資本移動が無い場合、BP曲線は垂直になります。

そのため資本の自由度は

  • 完全
  • 伸縮的
  • 硬直的
  • なし

の4段階に分けることができます。

CHECK

BP曲線の傾きは、資本移動の自由度

固定相場制度における政策の効果

一国の政府が金融政策や財政政策を行う場合は、この資本の自由度のレベル以外に、為替相場がどのような制度かによって効果変わってきます

その為替相場には、固定相場制と変動相場制があります。これらは資本移動の自由度が完全であることをここでは前提とします。

では、まずこの節では固定相場制における政策の効果を見ていきましょう。

固定相場制度における財政政策

結論から言うと、固定相場制度においては財政政策が有効です。

例えば、拡張的な財政政策をおこなうとIS曲線が右へシフトします。

財政政策を行うと利子率が上昇します。すると先にも説明したように、利子率が上がると高い利子率を目当てに、海外から資本流入が起こります。

自国内で取引をおこなうために、自国通貨への需要が増加します。すると自国通貨の価値が上がります。つまり超過需要にないリマス。

これに対して通貨当局は外国貨幣を購入する必要性があります。なぜなら、固定相場制度では為替レートを維持する必要性があるからです。。

これらの動きによって自国通貨の流通量が国内で増加します。これはマネーサプライが増加したと言い換えることができます。これをグラフで見るとLM曲線が右シフトします。

結果としてIS曲線もLM曲線も右へシフトするので、均衡国民所得は増加します。

固定相場制度で金融政策

一方で、固定相場市場では拡張的な金融政策は無効となります。

拡張的な金融政策をした場合、LM曲線が右シフトして利子率は下がります

すると、自国に比べて海外の利子率が高くなるので、資本流出が起こります。結果として自国通貨は超過供給になります。

通貨当局は為替レートを維持するために外国通貨を売却します。すると、自国通貨の流通量が国内で現象します。これはマネーサプライが減少したと言い換えることができます。

これをグラフで見てみるとLM曲線が左シフトしています。これは金融政策をした際に右シフトしたLM曲線が左シフトして帳消しになってしまいます。よって金融政策は無効になってしまうのです。

これまでの内容をまとめると固定相場市場では

  • 財政政策は有効
  • 金融政策は無効

と言うことになります。続いて変動相場制度における政策の効果を見てみましょう。

変動相場制度における政策の効果

変動相場制では、

  • 財政政策は無効
  • 金融政策は有効

になります。

変動相場制度で財政政策

変動相場制度のとき、拡張的な財政政策は無効となります。

拡張的な財政政策を行うとIS曲線が右シフトします。これにより利子率が上昇します。利子率が情報すると資本が海外から流入します。

資本流入が起こると、取引での自国通貨の需要が増加します。つまり超過需要です。

変動相場制度では為替レートは下落しまし。日本円でいうところの円高です。なぜなら資本流入によって自国通貨の価値が下がるからです。結果として輸出が減少します。

すると経常収支が悪化するのでIS曲線は左シフトします。

経常収支は悪化しIS曲線は左シフトします。

結果財政政策でIS曲線が右シフトしたにも関わらず、経常収支の悪化によって左シフトして、効果は帳消しになってしまうのです。変動相場制では財政政策は無効なのです。

変動相場制度で金融政策

続いて、拡張的金融政策行った場合はどうなるでしょう。結論から言うと有効です。

金融政策をおこなうと、LM曲線が右シフトして利子率が下がります。結果として、自国から資本流出が起こります。

自国通貨への需要が減少するので超過供給になります。すると自国通貨の価値は下落するので、貨幣レートが上昇します。

結果として輸出が増えます。経常収支が改善してIS曲線は右シフトします。するとLM曲線もIS曲線も右へシフトしているので、均衡点では国民所得が増加することになります。結果として金融政策の効果は有効となります。

これまでのことをまとめると変動相場制では、

  • 財政政策は無効
  • 金融政策は有効

になります。

固定相場制変動相場制
財政政策有効無効
金融政策無効有効
為替相場の種類別政策の効果

さいごに

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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それは、スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編・マクロ編です。

こちらはミクロ経済学に関して難しい数式を使うことなくわかりやすく説明してくれています。

これらの本を理解できたら、次に『スティグリッツ入門経済学』を読んでみるのもアリだと思います。ですが、正直、信じられないくらい分厚いので覚悟は必要かもしれません。

しかし、この本を読めば経済学という学問の全体像を知ることができるのでオススメです。

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