経済思想

新自由主義やマネタリズムで有名なミルトン・フリードマンについてわかりやすく紹介。

この記事では、新自由主義やマネタリズムで有名なミルトン・フリードマンについて解説します。彼の思想を知ることで、現在の経済政策への理解が大きく深まると思います。記事の構成としては

・フリードマンの生涯
・フリードマンの根本となる思想
・貨幣数量説


という構成になっています。また、経済思想について興味がある方は、50人もの経済学者について1人5分で理解きる『世界の経済学 50の名著』はオススメです。

この記事でわかること

・マネタリズムなど金融政策への理解が進む
・フリードマンその人の理解が進む
・新自由主義とは何かわかる

フリードマンの生涯

ミルトン・フリードマンは、アメリカの経済学者です。

池田信夫 blog : 「フリードマン革命」の終わり
ミルトン・フリードマン

彼はウクライナからの移民であるユダヤ系の末子として1912年にニューヨークのブルックリンで生まれました。

フリードマンは15歳で高校を卒業したのち、ラドガーズ大学で学士を取得。その後、シカゴ大学で経済学修士を取得しています。

1930年代の大恐慌とシカゴ大学の卒業が被った彼は、大学で職に就くことができず、ローズベルト政権のもと政府の仕事につきました。

第二次世界大戦後の1946年にシカゴ大学で教職につきました。それから30年に渡り自由主義市場を主張するシカゴ学派の中心になりました。

彼が思想上の師と仰いだのは、シカゴ大学で教鞭をとっていたフリードリヒ・ハイエクでした。

フリードマンは、ニクソン政権のアドバイザーとなり、変動為替相場制への移行に大きな役割を果たしました。1976年にノーベル経済学賞を受賞し、レーガン大統領から大統領勲章を受けています。

2006年11月16日 、心臓疾患のため自宅のあるサンフランシスコにて死去しています。

フリードマンの思想:新自由主義

ここではフリードマンの思想について解説します。

新自由主義

フリードマンは新自由主義者でした。

新自由主義とは政府の役割を最小限にとどめ市場メカニズムを信頼すること主張する思想のことです。

アダム・スミスの自由放任主義の延長線上にある考え方です。市場原理による自動調整メカニズムの信頼が前提にあります。

基本的に政府の規制や利権は撤廃する方向の政策をとります。それでも、市場メカニズムが働いて経済を安定させることができると考えていました。

ミルトンフリードマンと並ぶ新自由主義者にはフリードリッヒ・ハイエクがいます。フリードマンはハイエクを思想上の師匠と仰いでいました。

ハイエク

新自由主義的な政治家としてはサッチャー首相やレーガン大統領、中曽根総理大臣が挙げられます。

1970年以降、主流となっていたケインズ政策の限界が指摘されているなか、新自由主義は表舞台に躍り出ました。

CHECK

新自由主義:政府の役割を最小限に留め市場原理に任せるべきという考え方アダム・スミスの自由放任主義の延長線上にある考え方です。市場原理による自動調整メカニズムの信頼が前提にあります。

フリードマンの提案した政策

新自由主義者フリードマンは、自由主義として政府の規制を非常に嫌いました。その上で彼は、政府のあり方として2つの原則を提案しています。

まず1つ目の原則は、国防です。国を外国の攻撃から守ること。そして国内において、個人がほかの人から暴力的な攻撃を受けることを防ぐこと、これを第一の基本原則としました。

もう1つは、政策は下の地方自治体に任せたほうがいいという考え方です。なるべく下の組織に任せたほうがいいということです。これが第二の原則です。

なぜなら、国の政策ですと政策に不満でも国民は移住は難しいからです。しかし、市や町、州などの組織が政策を行うことで、政策に不満でも、別の州や町への移住が容易になります。

CHECK

▼第一原則:国防
・政府は他国から攻撃されたら国民を守れ
▼第二原則:小さな政府
・政府がやるべきことは、より小さな組織で行え。例えば市とか町とかで

また、フリードマンは以下の14つの項目を政府がやるべきでないとも主張しています。

①農産物の買取り保証制度。
②輸入関税と輸出制限。
③産出規制(農作物の作付面積制限、原油の生産割当てなど)。
④全面的な家賃・物価コントロール、賃金コントロール。
⑤最低賃金制、価格の上限設定。
⑥産業規制、銀行規制。
⑦ラジオとテレビの規制。
⑧社会保障制度(とくに老齢・退職年金制度)。
⑨事業免許制度、職業免許制度。
⑩公営住宅、住宅建設奨励のための補助金制度。
⑪平時の徴兵制。
⑫国立公園。
⑬営利目的での郵便事業。
⑭公有公営の有料道路。

『政府からの自由』(中央公論社)

マネタリストとしてのフリードマン:マネタリズム(貨幣数量説)

フリードマンは、マネタリストとしても有名です。マネタリストとはマネタリズム(貨幣数量説)を提唱する人々のことです。貨幣数量説は以下の記事で解説していますので合わせてお読みください。

マネタリズムとは?

マネタリズムとは、貨幣の量を中央銀行がコントロールすれば物価や景気を操作できるという考えです。

貨幣供給量の変化が、経済成長や長期におけるインフレに対して大きな影響を与えると考えました。

当時のケインズ流の財政政策とは真っ向から対立しました。

ケインズ派によって貨幣数量説は脇に追いやられていましたが、フリードマンによって貨幣数量説は再び光が当たるようになりました。

また彼は、裁量ではなくルールに基づいた貨幣操作をすべきと主張しています。

フリードマンは以下のような有名な言葉も残しています。

経済産出より早いペースで貨幣量が増えることによってのみ生まれ得るという意味で、インフレーションとはいついかなる場合も貨幣的現象である

Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon in the sense that it is and can be produced only by a more rapid increase in the quantity of money than in output.” Milton Friedman, The Counter-Revolution in Monetary Theory (1970)

貨幣の中立性

マネタリズムは、国民所得に対して貨幣の数量を変えたとしても影響を与えないとします。その代わり、物価水準を比例的に変化させるだけだと考えます。

この考え方の根拠に、貨幣の中立性があります。貨幣はあくまで取引の仲立ちをするだけであり、国民所得に対して影響を与えないとするのです。

とはいえ、物価水準が変化すると人々の生活に影響を与えるので、貨幣の流通量は管理する必要性があります。

CHECK

貨幣数量説:国民所得に対して貨幣の数量を変えたとしても影響を与えないとする。その代わり、物価水準を比例的に変化させるだけだと考え。その根拠として貨幣の中立性が挙げられる。
貨幣の中立性貨幣はあくまで取引の仲立ちをするだけであり、国民所得に対して影響を与えないとする

さいごに

最後まで読んでいただきありがとうございます。ここでは、フリードマンひいては経済学についての理解を深める上でオススメの書籍を紹介します。

フリードマンの原典として著名な『資本主義と自由』があります。正直、めちゃくちゃ難しいです。

原典に当たる前にもう少し理解を深めたい方は、50人もの経済学者について1人5分で理解きる『世界の経済学 50の名著』はオススメです。フリードマンについても解説しているのでオススメです。

この記事をきっかけで少し経済学について理解を深めたいと思った方は、以下の書籍から初めてみるのがおすすめです!

それは、スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編・マクロ編です。

こちらはミクロ経済学に関して難しい数式を使うことなくわかりやすく説明してくれています。

これらの本を理解できたら、次に『スティグリッツ入門経済学』を読んでみるのもアリだと思います。ですが、正直、信じられないくらい分厚いので覚悟は必要かもしれません。

しかし、この本を読めば経済学という学問の全体像を知ることができるのでオススメです。

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