ミクロ経済学とは?わかりやすく解説。〜不完全市場・市場の失敗〜

ミクロ経済学

この記事は、マクロ経済学について解説する記事になります。特にこの記事では、不完全競争市場と市場の失敗について触れていきます。この記事は、基本的な内容を踏まえた上でないと理解が難しい可能性もあります。以下の記事も見てみてください。↓↓↓↓

生産者理論・消費者理論はこちら
部分均衡分析・一般均衡分析はこちら

この記事でわかること

・ミクロ経済学の全体像がつかめる
・不完全市場の概要をつかめる
・市場の失敗の事例について学ぶことができる

不完全市場

 前の記事では、完全競争市場のなかで需給がどのように調整されていくか(均衡)をみてきました。詳細に関しては以下の記事をみてください。

ここからは、不完全競争市場について解説していきます。

 特に、不完全競争市場において注目すべきは生産者、つまり企業です。生産者がいかに利潤最大化できるかが、不完全競争市場をみるうえで重要になってきます。その利潤最大化条件は以下のようになります。

・完全競争市場の場合:価格(P)=限界費用(MC)
・不完全競争市場の場合:限界収入(MR)=限界費用(MC)

また、不完全市場には4つの分類があります。それが、独占・複占・寡占・独占的競争になります。以下の図のように、競争の度合いによって並び替えて示すこともできます。この競争の度合いの一番強いものが、前の記事で示した完全競争市場でした。

詳細に関して以下で述べていきます。

独占

どくせnどくせん不完全競争市場の企業分類のなかで、独占企業があります。完全競争市場の場合、企業はプライステイカーの立場を強いられます。これに対して、独占の状態では、1つの企業が市場価格に対して支配力(価格支配力)をもつことになるのです。これをプライスメーカーの仮定と言います。

独占企業による利潤最大化

完全競争市場における企業が利潤最大化を目的に行動するのと同様に、不完全競争市場の企業も利潤最大化を目的に行動します。

完全競争市場では、企業の行動は市場価格に影響を与えることがありません。企業も無数に存在するため、価格決定プロセスは企業ではなく市場が決定します。

 一方で、独占市場では、独占企業だけが生産者としての地位をもっています。そのため、価格決定は一つの企業がおこなうことになります。

企業の利潤最大化条件

完全競争市場では、企業の利潤最大化条件は価格(P)=限界費用(MC)でした。一方で、独占企業の利潤最大化条件は限界収入(MR)=限界費用(MC)となります。ちなみに、限界収入とは生産量を1単位増加させたときの総収入の増加分のことを指します

・利潤最大化条件

→完全競争市場の場合:価格(P)=限界費用(MC)
→不完全競争市場の場合:限界収入(MR)=限界費用(MC)

では、以下で利潤最大化の条件がどのようにして導出されるのか解説します。

利潤(R)は、総収入(TR)-総費用(TC)によって導くことができます。これを微分すると

・ΔR/ΔQ=(ΔTR/ΔQ)-(ΔTC/ΔQ)=0

となります。ΔTR/ΔQは限界収入(MR)、ΔTC/ΔQは限界費用(MC)にあたるので

限界収入(MR)-限界費用(MC)=0

が導くことができるのです。

これをグラフで見るとどのようになるでしょうか?それは以下のようになります。

余剰分析

そのため、独占市場となった場合完全競争市場と比較した場合、総余剰が小さくなることが以下のグラフからわかると思います。

複占

複占とは?

 複占とは、企業が2社以上あるケースです。独占の場合は1社しかありませんでした。そのため、価格決定はその1社に委ねられていました。
 これに対して複占の場合は、他の会社の動きに反応することになります。複占企業も価格支配力をもっておりますので、利潤最大化条件は、限界収入=(MR)限界費用(MC)となります。

また、複占には三つのパターンがあります。それが、

クールノー均衡:2社がお互いに影響力をもっている状態
シュタッケルベルク均衡:2社の一方が片方に追従する、実力に差がある状態
ベルトラン均衡:2社の実力は、そこまで影響せずにお互いの生産する財の価格に反応

クールノー均衡


 複占市場において2社の企業がお互いに影響力を持ち合わせている状態をクールノー均衡といいます。クールノー均衡において、ある企業は一方の企業の生産量を所与として利潤最大化をはかります。

X社とY社の複占市場を例に考えてみましょう。X社が自社の利潤最大化のために、前年よりも生産量を減らし価格を上げたとします。するともう一社のYも同じことを考えて生産量を減らします。するとX社が当初考えていたよりも市場価格が上昇してしまいます。

これを受けてX社は次の月には生産量を増加させます。市場価格を想定した価格に戻そうとします。するとY社も同じことを考え、生産量を増加させます。結果として、今度はX社が考えていたよりも市場価格が下落してしまいます。そこでX社はまた価格を上げるために生産量を減らして……。この繰り返しをクールノー競争と呼びます。

こうした関係性は反応関数で表すことができます。反応関数はある企業と、相手の企業の生産量の関係性を表しています。グラフで表すと、の交点が均衡した数量となります。(以下グラフ参照)

シュタッケルベルク均衡

 シュタッケルベルク均衡は、企業間の行動に差がある場合を分析します。登場する企業が2社である点は、クールノーの場合と一緒です。2社が異なる動きをする点に注意しましょう。

複占市場で、2社の企業が、先導者追随者で構成されている場合です。追随者は、先導者の生産量を所与として利潤最大化を目論見ます。一方、先導者は、自分の行動に対して追随者が後追いで生産量を決めることをすでに知っています。相手の動きを読んでいるのです。

こうした動きをグラフで確認してみましょう。反応曲線と等利潤曲線の関係を見ると、リーダー企業の等利潤曲線は下方向にいくほど利益が上がり、生産量も増加します。

ベルトラン均衡

ベルトラン競争は、生産量ではなく、価格で企業が利潤最大化を目指している状況のことを指します。最も安い価格を提示した生産者が市場を独占することができます。

寡占

 寡占は、企業が数社市場に存在するときにおこります。ここでは代表的なものとして屈折需要曲線について解説していきます。

まず、寡占とは数社の企業が価格支配力をもっている状態を指します。

特に、寡占市場では価格の硬直性が問題になります。価格の硬直性とは、価格調整のプロセスが柔軟におこなわれない状態のことを指します。経済学では、市場価格がスムーズになされる完全競争市場を効率的で良いものとしていたことは、前の記事で説明しました(パレート効率性)。しかし、寡占市場では、価格の硬直性によって効率性が妨げられてしまうことがあるのです。

こうした寡占市場における価格の硬直性を説明しるために生み出されたのが屈折需要曲線です。

屈折需要曲線

屈折需要曲線は、価格の硬直性を説明したものです。とくに費用面の変化に対して価格が「硬直的」である状態を説明します。以下の曲線が屈折需要曲線です。需要曲線が屈折しているから屈折需要曲線です。

なぜ屈折しているか?それは、複数の企業が存在する以上、自分と同じ行動を他の企業がするとは限らないからです。では価格がPaで決まっている状態から、価格を下げた場合とあげた場合の二つを考えてみましょう。

・価格を下げた場合(Paより値段を下げた場合)
ある企業が価格を下げた場合、他の企業も追随して価格を下げてきます。そのため、価格を下げても販売量はあまり変化しません。よって、需要の価格弾力性は小さいので需要曲線の傾きは急になるのです。

・価格を上げた場合(Paより価格を上げた場合)
 この場合、最初に価格を上げた企業の販売量は減少することになります。なぜなら、他の企業は、価格を上げない可能性もあるかあらです。寡占状態での値上げをした場合、需要の価格弾力性は大きいことになり、需要曲線の傾きは緩やかになります。

これらの理由から、寡占市場では需要曲線は屈折したかたちになるのです。

・価格を下げた場合:需要の価格弾力性が小さくなる

・価格を上げた場合:需要の価格弾力性が大きくなる

非連続な限界収入曲線

 寡占企業は価格支配力をもつため、利潤最大化条件は(MR)限界収入=限界費用(MC)になります。先に述べた、価格屈折需要曲線について限界収入曲線を入れて表現すると以下のようになります。

 先ほどの、はじめの価格Paのところで限界収入曲線が不連続になっていることがわかると思います
限界費用曲線(=供給曲線)がこの不連続なエリア内でシフトした場合、消費量と価格が変わらない地点が出てきます。これが価格の硬直性になるのです。

独占的競争

独占的競争とは?

独占的競争は、不完全市場と完全競争市場の中間に位置づけることができます。

・企業の数は無数
・市場に参入の自由

この点では完全競争市場と同じです。
 しかし、財の同質性は独占的競争市場にはありません。各企業の商品は、差別化されており、自社の商品に対して価格支配力を一定程度保持しています。例えば、同じ家具屋さんでも大塚家具とニトリはブランド力もあり、それなりに価格支配力をもっています。

短期均衡と長期均衡

完全競争を見ていく上で重要なのが短期と長期で変わってくるという点です。

・短期均衡
ここでいう短期とは新規参入がまだない状態です。差別化された商品を生産している企業は、短期的には利潤を独占することができます。なぜなら、最初のうちは競争相手もいないからです。

 短期の状態では、独占企業と同じく価格支配力をもつことができます。そのため、利潤最大化条件は限界収入(MR)=限界費用(MC)となります。

・長期均衡
長期的に見た場合、状況は変わってきます。なぜなら、新規参入が増えてくることで、最初の企業が持つ消費者に対する魅力が減少してくるからです。

こうした状況は、市場にいる企業の利潤が0になるまで続きます。企業の持つ魅力はどんどん減少していきます。その結果、完全競争の利潤最大条件である価格(P)=限界費用(MC)になるまで新規参入が続いていくのです。

これらのことから、独占的競争とは不完全競争と完全競争の過渡期の状態とも言えるでしょう。

市場の失敗

経済学では、効率的に財・サービスが行き渡る完全競争市場が理想とされていました。しかし、不完全競争市場のところでも見たように、実際にはうまくいくことはありません。こうしたうまくいかないことを市場の失敗と言います。

具体的には

・外部性
・費用逓減産業
・公共財
・不確実性
・情報の非対称性

といったものが挙げられます。それぞれ以下で詳細に解説していきます。

外部性

外部性とは?

 ある経済主体の行動が他の経済主体の意思決定に影響を及ぼすことを外部性(externality)といいます。外部性にも種類があります。

・外部不経済
・外部経済

また、前者が経済主体にとって不利に働くもので、後者が有利に働くものです。このように、外部性には負の側面を持つものとプラスの側面を持つものがあるのです。外部不経済の例として、公害があります。これは、工場から流れた汚染水によって、川下の住民に被害が及ぶものがあげられます。

一方で、外部経済の例としては養蜂場と果樹園があります。ハチの受粉によって果樹園は作物の繁殖が可能になりますし、養蜂場はミツを得ることができます。

私的限界費用と社会的限界費用

外部性を分析する上で、費用面に関して注目する必要性があります。特に、社会全体と企業の立場から見た費用を分けて考える必要性があります。

 そこで、限界費用(MC)は二つに分けることができます。
私的限界費用(PMC)
社会的限界費用(SMC)
です。前者は外部性を考慮しない限界費用。つまり、企業からみたな費用。後者は外部性を考慮した限界費用。つまり、社会全体からみた費用になります。この私的限界費用と社会的限界費用の大小が外部経済か外部不経済を分けることになります。

外部不経済

 外部不経済の場合、社会的限界費用(SMC)>私的限界費用(PMC)となります。以下のグラフを見ながら解説していきます。

個人が自分の利益のみを追求し、社会への被害を無視して行動した結果、社会に不利な影響を及ぼした場合が外部不経済でした。

これを個人の視点から見た場合の利潤最大化条件
・価格(P)=私的限界費用(PMC)
となります。このときの市場均衡点は、需要曲線と私的限界費用(PMC)曲線の交点になります。
 これに対して、社会全体から見たときの資源配分は、需要曲線と社会的限界費用(SMC)曲線の交点になります。


 これらに対して、余剰分析をおこなうと、社会全体のコストを負わず、低い限界費用のもとで生産していることがわかります。青い領域が外部不経済に相当します。また、外部不経済の場合、ポテンシャル以上を企業が発揮しているため過剰生産になります。

外部経済


 外部経済の場合、私的限界費用(PMC)>社会的限界費用(SMC)となりまます。

 外部不経済の場合と同様に、企業は社会のことを考慮に入れず生産を行います。企業か実現した利潤最大化条件は、
・価格(P)=私的限界費用(PMC)
です。市場均衡点は需要曲線と私的限界費用(PMC)曲線の交点です。


社会全体からみてのぞましいパレート効率的な資源配分は、需要曲線と社会的限界費用(SMC)曲線の交点で実現します。このとき、総余剰が最大となります。企業は社会全体からみると高いコストで生産をしていることになります。
そのため、もっとポテンシャルがあるにも関わらす生産ができていない過少生産の状態になってしまします。

ピグー的政策

このように、外部不経済の場合、過剰生産に外部経済の場合には過少生産になります。これは効率的な資源配分ができていない状況となっています。これを修正するのは政府の役目になります。

外部不経済の場合、過剰生産に対して、必要なコストを「租税」の形で課すことによって、私的限界費用(PMC)を社会的限界費用(SMC)まで上昇させます。環境税がそれにあたります。これをピグー税といいます。

また、外部経済の場合は過少生産になっています。この場合、補助金を出すことで生産を促進します。これにより、私的限界費用(PMC)を社会的限界費用(SMC)まで下げます。

コスト均衡点ピグー的政策
外部不経済SMC>PMC需要曲線とPMC曲線の交点租税
ピグー税
外部経済SMC<PMC需要曲線とSMC曲線の交点補助金
ピグー的補助金

費用逓減産業

費用逓減産業とは?

 電気・ガス・水道などの社会的なインフラは、財・サービスの供給を開始する以前に莫大な設備投資が必要になってきます。こうした産業は、固定費用(FC)が多くかかります(別記事の生産者理論のところで言及)。

費用逓減産業とは何か?それは、固定費用(FC)が大きいため、生産を増加させるたびに平均費用(AC)が減少する産業のことを指します。

 より詳細に解説します。生産量1単位あたりの固定費用(FC)を平均固定費用(AFC)といいます。平均固定費用(AFC)は固定費用(FC)÷生産量(Q)と分解することができます。そのため、生産量が増加するにつれて平均固定費用(AFC)は減少していきます。
 電気やガスなどの産業は総費用(TC)に対する、固定費用(FC)割合が大きいです。そのため、生産量が増えるにつれて平均費用(AC)も減少することになります。

これらの、産業は市場原理に任せていると独占企業へと成長していきます。

自然独占

費用逓減産業は市場原理に任せていると、独占産業になってしまします。これを自然独占と言います。

 独占状態なので、利潤最大化条件は限界収入(MR)=限界費用(MC)になります。この自然独占には、社会全体でみると厚生損失を生み出してしまいます。費用逓減産業は、人々の生活に必要不可欠なものを生産することが多く、政府が補助金や租税によって規制する必要性があります。

公共財

公共財とは?

公共財には、国防・警察・消防などがあります。民間の企業が供給するには難しいものが多く含まれます。こうした、政府が供給するサービスを公共財といいます。

 公共財の特徴には
非競合性
非排除性
の二つがあげられます。この特徴について以下で詳しく解説していきます。

非競合性

これに対して、公共財については、消費者間で競争はおこなわれません。このことを、消費の非競合性といいます。

非排除性

 公共財は、対価を支払わない消費者であっても利用が可能です。このことを消費の非排除性といいます。また、こうした公共財を対価を支払わずに利用する消費者をフリーライダーといいます。

不確実性

不確実性とは?

将来の予測を事前に立てることができないことを不確実性と言います。簡単に言えばリスクなどがそれに該当します。

期待効用

期待効用とは、予測される効用という意味です。経済学では、期待は予測とほぼ同じ意味で使われています。FIREを目指して資産投資をする人は近年増えています。彼ら投資家たちは、確実に得られる効用と不確実性の高い期待効用を比較して行動しています。

また、期待効用(EU)は、効用(U)に期待が実現する確立(P)をかけたものです。

期待効用の求め方
期待効用(EU)=効用(U)×実現する確立(P)

また、投資に対して冒険的な人もいれば保守的な人もいます。これを経済学では、慎重順に危険回避的>危険中立的>危険愛好的と分類しています。

先ほども述べたように、投資家などは不確実性の高い期待効用と確実な効用を比較して消費を決定します。(以下の表参照)

行動分類行動リスクプレミアム
危険回避的期待効用<確実な効用
危険中立的期待効用=確実な効用±0
危険愛好的期待効用>確実な効用

危険回避的な人は、株にしろ、債券にしろなかなか購買にいたらないので、こうゆう人が増えると社会全体の生産性は下がることになります。

また、確実な所得を獲得するために支払ってもよいと考える保険料や手数料のことをリスクプレミアムと言います。これも、行動の分類によって異なってきます。(上記表参照)

情報の非対称性

情報の非対称性

 売買をおこなう経済主体の間で財・サービスに関する品質の点で情報の格差が存在することを、情報の非対称性といいます。

それが
逆選択(アドバースセレクション)
道徳的危険(モラル・ハザード)

です。以下で詳細に解説していきます。

逆選択(アドバース・セレクション)

 品質の良い財が市場から排除され、品質の悪い財が市場で選択されるようになるケースを逆選択(アドバース・セレクション)といいます。

たとえば、中古車市場がそれにあたります。中古車の品質に関しては売り手の方が持っているケースが多いです。その際に、品質の悪い車ばかりを高い値段で売ろうとするでしょう。こうした行動の積み重ねは、が品質の悪い自動車を市場に溢れさせることになります。


この解決策として、バイヤーが品質について情報を発信するシグナリング(シグナル)があげられます。具体例として、労働市場における資格などがそれにあたります。

道徳的危険(モラル・ハザード)

 もう一つがモラルハザードです。モラルハザードにおける経済主体として依頼人(プリンシパル)と代理人(エージェント)があります。
サービスを受ける側を依頼人(プリンシパル)
サービスを提供する側を代理人(エージェント)
といいます。

この場合も、サービスに対する知識は代理人の方が持っているケースが多いです。この時に依頼人が代理人の行動を把握することは難しくなります。たとえば、営業マンなどがそれにあたります。外回りと称してパチンコをしてる営業マンはよく見る光景です。こうした行動を把握することは、難しくなります。

こうした、依頼人が知識の格差によって経済的不利益を被ることを道徳的危険(モラル・ハザード)と言います。

これに対する対処小として、インセンティブ(誘引)を与える契約をすることである程度防止することが可能になります。具体例として、歩合給などにすることでやる気を引き出すケースなどはそれにあたります。

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